RAMPO Entry 2009
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2009年10月9日(金)

雑誌
荷風! 21号
9月1日 日本文芸社
A4判 113ページ 本体838円
江戸川乱歩『陰獣』大都会東京を生きる者その「聖」と「俗」の匂い 今村幸市(文)、天野憲仁(写真)
エッセイ p98
連載〈東京ミステリーの現場〉第6回

江戸川乱歩『陰獣』
大都会東京を生きる者
その「聖」と「俗」の匂い

今村幸市  

 『陰獣』はミステリーとしての完成度が高いだけでなく、作中に登場する「大江春泥」という推理作家が乱歩の分身のように描かれていることでも知られる。「大江春泥」はある事情から都内を点々と引越すのだが、それはまさに引越し好きだった乱歩がたどる足跡と重なる。そういう意味では、乱歩が、浅草を通して「大都会東京」というものと向き合うことで生まれた都市ミステリーでもある。
 そう思いながら『陰獣』を読むと、この小説には、都市生活者の「聖」と「俗」との極みの匂いが漂っているような気がしてくる。
 小山田六郎氏の死体が発見された河蒸気の発着所には、現在、水上バスの乗り場がある。ただし、立替工事が控えていて本来の建物は閉鎖中。少し川上に歩いた仮営業所から乗下船するようになっている。河蒸気とちがって今の水上バスは、多くの観光客を乗せて日の出桟橋やお台場方面へと向かう。

 
 日本文芸社:荷風!