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2009年9月11日(金)

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毎日jp
9月8日 毎日新聞社
9月8日付東京夕刊掲載
Crossroads:乱歩歌舞伎「人間豹」 続編の「京乱噂鉤爪」来月上演 小玉祥子
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Crossroads:乱歩歌舞伎「人間豹」 続編の「京乱噂鉤爪」来月上演

 ◇幸四郎と染五郎が主演「面白い部分取り入れて創作」

 松本幸四郎と市川染五郎の主演で昨年11月に東京・国立劇場で上演された「江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)−明智小五郎と人間豹(ひょう)」は、江戸川乱歩作品の初歌舞伎化として話題を集めた。その続編「京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)−人間豹の最期」(岩豪友樹子脚本、九代琴松演出)が10月に同劇場で上演される。【小玉祥子】

 前作では原作の「人間豹」の設定を昭和から江戸に移し、明智小五郎は探偵から町奉行所同心に置き換えられた。人間豹と呼ばれる怪人、恩田乱学(染五郎)が次々と女性を殺害。最後に明智(幸四郎)に追いつめられ、大空へ姿を消す。

 続編はすべて新たに創作。幕末の京に恩田が現れ、明智は探索のため京へ向かう。明智と恩田は再び闘うが、陰に天下の転覆をはかる陰陽師(おんみょうじ)、鏑木幻斉(中村梅玉)の姿が見え隠れする。

 岩豪は「前作をご覧になった方にも初めての方にも面白くなくてはいけない。乱歩のいろいろな作品から題材を取り入れました」と続編ならではの苦労を語る。

 映画には続編やシリーズ物が多いが、歌舞伎ではあまりない。戦前では六代目尾上菊五郎が木下藤吉郎を演じた「太閤記」シリーズ(1940年)など。近くは市川猿之助によるスーパー歌舞伎「新・三国志」3部作(99年から)や幸四郎の「夢の仲蔵」シリーズ(2000年から)が挙げられる。

 ところが、染五郎は現在もシリーズ物に主演している。東京・歌舞伎座の昼の部で上演中の「竜馬がゆく 坂本竜馬最後の一日」(司馬遼太郎作、齋藤雅文脚本・演出、26日まで)だ。07年9月の同劇場の「竜馬がゆく 立志篇(へん)」を皮切りに、08年9月に同劇場で「風雲篇」が上演され、「最後の一日」で3部作が完結する。演じる役はもちろん竜馬。

 「『立志篇』は、まだ何もなしていない竜馬をどう面白く見せるか。『風雲篇』の竜馬は既にいろいろなことをしている。それをどう整理するか。『最後の日』は竜馬の死までをどう見せるか。それぞれに難しさがあります」と話す。

 「人間豹」の歌舞伎化を提案し、今回の原案を考えたのも染五郎だ。「前作で面白かった部分は、今回も取り入れるようにしました。いいものには普遍性がある。それを探し出すのが、連作の難しさかもしれません」

 宙乗りや炎の場面、鏑木の妖術など、視覚的なおもしろさも味わえそうだ。梅玉も「あいつさえいなければと思っていただけるように憎々しく演じたい」と張り切る。

 幸四郎は九代琴松として演出にもあたる。「新作歌舞伎では珍しい第2弾ができた。『仲蔵』からの積み重ねが乱歩歌舞伎に結びついたと思います」。10月4日から27日まで。問い合わせは0570・07・9900へ。【小玉祥子】<月末を除き毎週火曜日に掲載します>

毎日新聞 2009年9月8日 東京夕刊

 
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