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2009年9月11日(金)

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9月10日 読売新聞社
「名古屋をどり」動きの切れさすが ──舞台評 中村桂子
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「名古屋をどり」動きの切れさすが ──舞台評

 西川流の先代家元二世西川鯉三郎が1945年に始めた「名古屋をどり」も今秋で62回目。時代にアピールする日本舞踊をめざし、様々な趣向を凝らしている。

 チャレンジ精神と変化の象徴が、夜の部の新作舞踊劇「穴」(作・演出=青井陽治、作舞・演出=西川右近)だ。狩りの途中で青年2人が穴に落ち、1人(西川千雅)はすぐ現世へ戻るが、もう1人(大沢健)は残ることになった。ところがそこは異界。現世への扉が開くのは年に1度きり、しかも、かの地の1年は現世の百年に当たるという。

 劇団四季からキャリアをスタートさせた青井だけに、手触りはさながら子供ミュージカル。大沢だけでなく舞踊家たちも歌に挑み、なかなかの成果をあげている。動きの切れ、まとまりの良さはさすがだ。

 中でも青年の半世紀後、1世紀後を演じる千雅の老けっぷりが面白い。彼は和洋混交の音楽も担当。昼の部の舞踊劇「蔵の中〜うつし世は夢」、鯉三郎の生誕百年を記念した特別企画「名古屋をどりに歴史あり」にも出演している。

 江戸川乱歩の原作を久世光彦が脚色した「蔵の中」は15年ぶりの再演。人形(大沢)に魅せられた男(千雅)に妻(景山紀子)が嫉妬し、殺人に至る。乱歩ならではの倒錯美の世界を幻想的に描き、「穴」とは好対照。大沢が人形ぶりから連舞まで美しくこなし、花柳流名取の腕前を見せる。

 なお、今回から昼・夜最後の舞踊劇を千円で鑑賞できる一幕見券(当日発売)のシステムを導入した。14日まで。

(中村桂子)

(2009年9月10日 読売新聞)

 
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