名張人外境 Home > RAMPO Entry File 2009 > 09-11 |
2009年11月11日(水)
|
●書籍 | |||||||||
紙上で夢みる 現代大衆小説論 上野昂志 | |||||||||
9月11日初版第一刷 清流出版 B6判 カバー 301ページ 本体2400円 著:上野昂志 |
|||||||||
|
|||||||||
ディスカバー「怪奇幻想」 横溝正史論 | |||||||||
評論 p154−173 | |||||||||
|
|||||||||
錯乱する距離 江戸川乱歩論 | |||||||||
評論 p181−200 | |||||||||
|
錯乱する距離 江戸川乱歩論
上野昂志 触覚的世界の勝利。『盲獣』という作品が示しているのは、そのことである。これを、『屋根裏の散歩者』から出発した江戸川乱歩という作家においてみるならば、世界から隔てられ、見ることのみを強いられたものが、その距離と戯れ、距離を犯し、やがてはそれを徹底して蹂躙してしまう道筋として了解することができるだろう。戦後の少年ものの作家としても、この主題はいささか微弱になりながらも、なお怪人二十面相と明智小五郎との、涯もない追いかけっことして、すなわち距離との戯れとしてあることは、改めていうまでもない。江戸川乱歩は、その生涯を通して、距離に憑かれた作家にほかならないのである。だが、そのことが、『盲獣』や『芋虫』のように、触覚的世界の勝利へと行きついているとしたら、やはりそれはただごとではない。何故なら、触覚的世界とは、常に視覚の圧倒的な優位によって、この世界の中心から排除され、片隅の暗がりへと追いやられてきた領域だからである。 |
|
▼Amazon.co.jp:紙上で夢みる−現代大衆小説論 ▼オンライン書店ビーケーワン:紙上で夢みる 現代大衆小説論 |