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2009年9月22日(火)

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9月19日 東京新聞(中日新聞東京本社)
〈歌舞伎〉原案・染五郎、演出・幸四郎で『京乱噂鉤爪』 新作へ熱い情熱注ぐ 藤英樹
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<歌舞伎>原案・染五郎、演出・幸四郎で『京乱噂鉤爪』 新作へ熱い情熱注ぐ

2009年9月19日

 江戸川乱歩の「人間豹(ひょう)」を原作とした新作歌舞伎が好評を博したことから、その続編「京乱噂(きょうをみだすうわさの)鉤爪(かぎづめ)」が来月四日から、東京・国立大劇場で始まる。主演の松本幸四郎、市川染五郎父子らが新作歌舞伎への熱い思いを語った。 (藤英樹)

 今回は乱歩の原作はなく、原案を染五郎が担当、演出は前回に続き幸四郎(九代琴松)。染五郎の人間豹(殺人鬼)が、京を舞台に幸四郎の明智小五郎に追い詰められついに最期を迎えるのが見どころだ。新たに、天下転覆を狙う陰陽師(中村梅玉)も絡む。

 「最初は乱歩作品が歌舞伎になるとは思わなかった」と言う幸四郎。ところが「いざやってみると、乱歩作品の持つシュール(レアリスム=非日常性)と悪(ピカレスク)が実はすごく歌舞伎的で、面白い結果が出た」と、昨年十一月に同劇場で上演された第一作「江戸(えどの)宵闇妖(やみあやしの)鉤爪(かぎづめ)」の成功に満足そう。

 同劇場によると、ふだん歌舞伎を見ないような若い観客が公演後半になるにつれ増えたという。すぐに続編の話が浮上。最初に「乱歩作品を歌舞伎にしてみたい」と言い出した染五郎が原案にとりかかった。「舞台の合間に近くの喫茶店でパソコンを開いて原案を練った」と染五郎。前作で大谷竹次郎賞奨励賞を受賞した岩豪友樹子が脚本にまとめた。

 幸四郎は「新作歌舞伎というと昔から評価が低いが、実は歌舞伎にとってとても大事なもの」と強調する。「新作を生み出し、演じるのは至難の業。続編となれば奇跡に近い。でも取り組むことは歌舞伎俳優に大きな力を与えてくれる。私たちのそういう情熱を評価していただきたい」

 梅玉は「前作の評判を聞いて、ぜひ参加したいと思っていた」と言う。演じる陰陽師は人間豹を操る悪の権化ともいえる存在。「乱歩作品らしく怪しい雰囲気を出し、思い切り憎たらしく演じたい」と意気込む。

 幸四郎、染五郎父子が舞台でがっぷり四つで対決する展開も楽しみだ。幸四郎は「ありがたい半面、俳優として(染五郎は)脅威。老骨にむち打って負けないように頑張らないと」と笑わせる。

 一方、染五郎は「自分が考えたものが形になり、同時に思ってもみなかった方向にいく面白さを知った」と新作に味をしめた様子。「乱歩は今回で最後だが、ほかにも文学作品で新作歌舞伎にできそうなものがあると思う。ああいう歌舞伎、こういう歌舞伎があっていい」とさまざまな可能性を思案する。

 幸四郎は「乱歩歌舞伎の舞台の幕末と、現代は乱世という点で似ていると思う。だから現代への問題提起も含んでいる」と語る。そしてこうも力説した。「歌舞伎は伝統芸能であると同時に演劇。私たちの父や祖父たちが心理描写やリアリズムをつけ加えて歌舞伎を演劇として面白くしてきた。私たちもそういう努力を引き継がなければいけない。演劇としての歌舞伎をより発展させていきたい。新作歌舞伎をやる意義はそこにあるんです」

 十月二十七日まで。1万2千〜千5百円。(電)0570・07・9900。

 
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