RAMPO Entry 2009
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2009年11月4日(水)

雑誌
週刊文春 10月15日号
10月15日 文藝春秋 第51巻第39号
B5判 164ページ 本体333円
松本清張・1959 小林信彦
エッセイ p56−57
連載〈本音を申せば〉第574回

松本清張・1959

小林信彦  

 そのころの「宝石」は江戸川乱歩が実質的な編集をしていた。乱歩は毎日、会社に出てこられないので、Tが雑用を代行していた。
 編集者だけでなく金主でもある乱歩の噂になると、清張はこう言った。
 「乱歩さんは長生きし過ぎたね。『芋虫(昭和四年の作品)』あたりで亡くなったら、これはすばらしい天才ということになっていたのにな」
 言い過ぎではないか、とぼくは思った。江戸川乱歩の本領が初期の短篇にあるというのは、当時としても常識的な見方であったが、ここまで言いっ放しにしてしまうのはいかがなものか。

 
 文藝春秋:週刊文春