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2009年10月24日(土)

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毎日jp
10月21日 毎日新聞社
10月21日付東京夕刊掲載
歌舞伎:京乱噂鉤爪(国立劇場) 恩田と大子の差異出した染五郎 小玉祥子
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歌舞伎:京乱噂鉤爪(国立劇場) 恩田と大子の差異出した染五郎

 昨年、国立劇場で上演された「江戸宵闇妖(えどのやみあやしの)鉤爪」の続編。市川染五郎原案、岩豪友樹子脚本、国立劇場文芸課補綴(ほてつ)、九代琴松演出。

 幕末の動乱のただ中、人間豹(ひょう)と呼ばれる殺人鬼の恩田乱学(染五郎)が京に現れる。探索にあたる同心の明智小五郎(幸四郎)は、乱学を操るのが陰陽師の鏑木幻斎(梅玉)であることに気づく。

 本作には前作のような原作がない。江戸川乱歩作品から小五郎、乱学という登場人物こそ借りているが、筋立ては独自のもの。とはいえ、そこは歌舞伎らしく「戻橋」や「京人形」を思わせる趣向も織り交ぜられ、娯楽性たっぷりの楽しい作品に仕上がった。

 染五郎のもう一役が、計算高い商店主(錦吾)の妹の大子。公家の実次(翫雀)と恋に陥る。体は大きいが、心優しい女性を愛らしくユーモラスに演じ、恩田との差異を際立たせた。その恩田では宙乗りも披露。舞台狭しと獣のような立ち回りを見せる。

 敵役の鏑木は「花がたみ」という人形(梅丸)を偏愛する異常者で、冷たく気品があって不気味。梅玉の造形がうまい。幸四郎は「一条戻橋」の恒川刑部で渡辺綱を思わせる骨太さを見せるなど、恩田や鏑木と対照的な正義感、清潔感を表現した。

 翫雀、錦吾、高麗蔵、錦弥が適材適所。子役の梅丸、錦成も活躍する。27日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2009年10月21日 東京夕刊

 
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