RAMPO Entry 2009
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2009年11月21日(土)

書籍
我等、同じ船に乗り 心に残る物語──日本文学秀作選 桐野夏生
11月10日第一刷 文藝春秋 文春文庫
A6判 カバー 463ページ 本体686円
編:桐野夏生
芋虫 江戸川乱歩
作品収録 p103−133
底本:心理試験他六編 春陽文庫 1987年
初出:新青年 昭和4年1月号
あとがき──我等、同じ船に乗り 桐野夏生
解説 p456−463

 
あとがき──我等、同じ船に乗り

桐野夏生  

 「芋虫」
 江戸川乱歩は、自身を、子供の頃からものの考え方や感じ方が他の子供と違って「異邦人」のようだったので、「ハチブ」にされてきたと語っている。その「異邦人」が書いた「芋虫」は、戦争中、発禁処分を受けた。妻からは気持ち悪いと言われ、戦後は傷痍軍人に対する配慮から、自ら刊行するのを取りやめる。
 しかし、乱歩自身は「極端な苦痛と快楽と惨劇とを描こうとした小説で、それだけである」(『江戸川乱歩全集第3巻 陰獣』光文社文庫)と書いている。エロくて悲しくて凄絶で残酷。最高の小説である。私は、中学生の頃に、「芋虫」を読み、人は何を思ってもいい、小説は何を書いてもいい、と眼から鱗を落として貰った。

  
 
 文藝春秋:我等、同じ船に乗り