江美国境 金糞岳北面 八草川(下半)
堂々たる川を歩く '04/10/24
 金糞岳の北側に八草川という、えらく流域の長い谷が入っている。雪のある時期のこのあたりのことは、よくわかっているつもりだったが、無雪期のことはほとんど知らない。八草峠の滋賀県側が通行止めになっているのをいいことに、静かそうな八草川を目指す。
 珍しく前夜、金居原の奥の出口土倉まで入る。翌朝は案の定寝過ごしてしまい、起きた時は9時前になっていた。私には、どうやら自宅から早朝に出かける方が向いているらしい。さっそく八草トンネルを岐阜県側へ抜けて、トンネル出口から旧道を遡る。旧道から見る八草川は、ウンザリするほど大きな砂防堰堤をいくつか連ねて、先行きが暗い。この調子では、右俣出合から上にも大きな堰堤がありそうだ。堰堤登りの一日になるのだろうか。
 土蔵岳の頂上台地から南西へ伸びる尾根の鼻を回り込んだところで置車。ここから先の旧道は、八草川右俣を大きく迂回して峠へ向かってどんどん高度を上げて行くので、八草川の本流へ下るのが困難になる。どうせ寝坊したのだからというわけで、ここでゆっくり朝食。おかげで出発は10時前になってしまう。

 置車地点から右俣の斜面を出合にむけて下る。本流の出合は右俣もふくめ、ゴルジュ状となっている。想像したより堂々とした流れだ。本流はすぐに大きな深い瀞になっていて、濡れるのを嫌い、左岸の土壁を登る。すると上には草の生えた林道がある。地図には全く載っていないので面喰らうが、林道があるなら終点まではこれを利用するしかない。八草集落跡と思われる石碑を右に見て、今にも熊が出てきそうな草深い林道を行くと、途中で2度ほど八草川を渡る。いづれも橋は流失してしまっている。だんだん細く、崩壊部分が多くなると、八草峠に向かう谷の一つ手前の大きな谷の出合付近で林道は終わる。あたりは杉の植林地になっている。杉の植林の中を横断し、急な泥のルンゼを下って本流に戻る。右俣出合から1キロほども歩いただろうか。

本流に降り立つと早速ゴルジュ
廃棄林道沿いの集落跡の石碑
こんなゴルジュが続く本流
 降り立った本流はすぐに両岸のあまり高くないゴルジュ状となる。どこまで続くかわからず、捲くとなかなか手こずりそうな様相なので徒渉をくり返しながらゴルジュ内を進む。所々に現れる瀞はあまり深くはなく、底が見えるものが多いが、この時期、胸まで浸かるのはご免こうむりたい。時折現れる屈曲部分では常にゴルジュが厳しくなり、小さな捲きもまじえてゆくと、2.5万図にある636m地点に達し、右岸から滝になって支流が落ち合う。このあたりで本流に滝があれば、絶望的な高捲きをしなければならないが、幸い流れの横を通過できた。
夏なら水の中なんだが、今となっては...
このあたり捲くのは少々辛い
636m地点、右岸から枝沢

次の、金糞北尾根1211m標高点から来る支流も、滝状に右岸から落ち合う。このあたりの、地形図で見ると明瞭な屈曲点は、ゴルジュもかなり圧迫感があり、手ごたえ十分である。前方がやや明るくなってくると、本流では珍しい落差が5mほどもある滝を見る。右岸の岩を簡単に越えられそうな感じだったが、近寄ると逆層で少々緊張する。これをこえると、両岸が開け、前方が見通せるようになる。遅い出発だったので、今日の所はこれまでとして帰路を探る。ここが左岸に八草峠からの林道が降りて来ている地点と考え、左岸側に取り付ける所を探しながらしばらく遡る。傾斜が一様な薮の斜面に取付き、100m足らず枝を掴んで登ると、予想通り林道に出た。林道は造成されたばかりの部分が八草川の奥へ続いており、もう少し奥まで本流を遡れば、あまり苦労なく林道へ上がることができたことを知る。八草川上半は今後の課題としよう。 通行禁止の林道から車の来ない静かな八草峠へ出、坦々とした岐阜県側旧国道を置車地点へ戻る。

下半ゴルジュ帯最後の滝は右岸を
滝上は平流で広々眺めが広がる
八草峠越えの旧国道から見る八草川中流域
 ケチな薮沢を予想していた八草川だが、金ヶ丸谷の中流部によく似て、なかなかどうして堂々とした楽しめる川であった。右俣出合から上部は堰堤もなく、これなら夏に涼しい川遊びが思う存分できそうだ。

'04.10.24 歩く 時間:置車9:40--本流出合9:50--林道終点10:20--636m屈曲地点11:55--ゴルジュ端の滝12:20--遡行打切点12:45--林道12:54--八草峠13:20--置車(右俣出合上)14:10)