若丸山遥かなり '04.4
越美国境スキー行 アラクラ尾根の頭
アラクラ尾根の頭から北-東方向を見る 右に若丸山のドーム、背後に能郷白山、その北に姥ヶ岳
 長い間、若丸山への登路を考えて来た。しかしなぜか、なかなか実行に移せないでいた。ヤル気があれば、夏に沢登りで達することはできる。しかし、--理由はないが--できれば雪の残るうちに登りたい。そう思って地形図を眺めるが、なかなかよいアイディアが浮かばない。要するに、若丸山は冬も登りにくい山なのだ。
 いつまで地図を眺めていても埒があかないので、洗練されているコースとはいえないが、冠山への登路から越美国境稜線を経由して、若丸山登頂を試みることにする。
 積雪期の国境稜線への登路での問題点は、
 美濃側からのルートは国道(R417)の冬期通行止めで全く使えない。
 越前側のR417も、田代の先、冠山林道起点で通行止めになっている。
 (少なくとも4月末まで)
の2点で、どちら側のアプローチも問題があるが、福井県側の方が、遥かに要する労力が少なくてすむ。したがって冠山林道を使う以外に手段はない。

 冠山林道を使うとなると、考えられる国境稜線までの登路は3つに限られる。
 冠山林道起点から二つ目の谷出合いから、郡界尾根を経由する「旧冠山登山道」
 冠ヶ峠(越前側)登山道
 冠山峠経由の夏のハイキング道
この中ではまずは3が、アプローチの長さと興味のなさで脱落する。となると、残る2ルートが候補ということになる。今回は、登りにを、下りにをとる。スキーは今年から始めた70cmの板に、旧式の愛用バインディング(ジルブレッタ300)を装着したものを持参する。
冠山林道から見上げる冠山北面
カ旧冠山登山道取付の堰堤
郡界尾根JPから国境稜線
 自宅を5時前に出発。すでに遅きに失する予感がある。8時15分冠山林道起点着。この先、林道は通行禁止となっている。バリアを無視しても林道は落石が散乱していて、先が長く思えないので、ここで置車とする。出発8.40。
 ところどころ残雪のある林道をのんびり歩き、旧登山道のある谷出合9.05分。出合は砂防堰堤になっているので右岸のふみあとから堰堤の上の河原に出る。ここには3つの沢が合流しており、左岸から入る一つ目の沢の左手(右岸)の尾根が旧登山道らしい。取付きは踏み跡も不明瞭だが、尾根上へ出ると、古い踏み跡が見つかる。ただし、薮が覆いかぶさっており、しょっぱなから薮漕ぎが始まる。担いでいるのは70cmの板だが、それでも泣きたい程引っ掛かる。雪で横倒しになった薮は、まるで踏み跡をバリケードのように塞いでいる。先が思いやられる。

 1時間ほどで郡界尾根へ抜け出るという当初の目論見は見事に外れ、美濃俣丸のカイドウノ尾に勝る薮漕ぎに苦戦することとなる。親指ほどの太さの笹も茂り、この旧登山道が使われなくなって久しいことが(来てみて)よくわかる。
 取付きから大汗をかくこと1時間半、ようやく宇津井谷山からの郡界尾根JPに出る。熊ノ河谷源流をはさんで、対岸にアラクラが大きくそば立つ。ここまでではやくも5割予定時間を超過。あとは雪のなだらかな尾根が...との期待は裏切られる。望む国境稜線までの郡界尾根は、いくつものピークが続き、急な部分はすべて雪が落ちていた。この時点で、気持ちの上ではすでに、若丸山へ達することは不可能に思える。風陰で、なかば諦めの気分の大休止。

 激烈な笹薮の下降から痩せた尾根をたどる。次の1059mピークの登りはこれまたすごい。シャクナゲ、ヒノキ、笹などが密生した痩尾根は、両側とも急で、捲くに捲けない。忠実に薮と向き合うしか手段はない...グチはよそう、遅い出発の口実をいくら書き並べたとて、はじまらない。

P1059mから熊ノ河谷源流
P1059mから国境稜線
郡界尾根1059標高点ピーク
 次のピークを越えたあたりから、ようやく薮が締まった雪に埋まりはじめ、行程が順調にはかどる。国境稜線着、12時50分。冠山東北面と美濃側の展望が一気に開ける。郡界尾根JPから2時間強かかってしまった。予想の2倍!情けない。仕方がない、今日は若丸はあきらめ、途中にあるアラクラ尾根の頭(1262m)までにしよう。
国境稜線への最後の階段状の登り
冠ヶ峠付近からの冠山
 ここからようやくスキーを履く。相変わらず幅の狭い応急シールなので、ザラメ雪では登りでスリップしやすい。下りは快調だが、登りで消耗するので、これではツボ足とあまり変わらない。いくつかのコブを越え、丸い雪のドームになったアラクラ尾根の頭(1262m標高点)着13時20分。西風がけっこう強く、東には若丸山が能郷白山を背景に遠い。ここからまだ1時間半はかかるだろう。課題は残った。
1262m標高点から南西方向を望む。遠くは伊吹から笹ヶ峰、釈迦嶺がよく見える
同じく東、若丸山を望む
 冠平手前の冠ヶ峠までもと来た道を戻る。国境尾根へ出た地点からものの100mほど行くと、冠ヶ峠着14時。峠と言っても単なる雪のピークである。峠からの下り口が見つかるかどうかやや不安だったが、赤布がつけられていた。急な雪の斜面なので右の谷へ滑り込むことも考えるが、下部の様子がわからないので、尾根を下ることにする。尾根も少し下ってからスキーを脱ぐ。ブッシュが出ているし、斜面が急すぎて滑降が楽しめず、ツボ足の方がはるかに早い。900m付近で雪は切れ切れになり、薮が濃くなるが、踏み跡は比較的明瞭で、下りなので消耗はあまりない。最後の林道へ出る地点は、もろい10mほどの崖になっていてロープがないと下れない、仕方なく50mほど尾根を登りかえし、左手(冠山峠側)の薮の急斜面をブッシュをつかんで腕力で下る。この下降は中指靱帯を切った身には少々辛いものがあった。14時37分デブリで埋まった林道に降り立つ。下りは40分弱要した。
あとは冬将軍の置き土産の落石や土砂、デブリが散乱する林道を1時間ほどひたすら歩き、出発点帰着15時30分。
1262m標高点から南東方向を望む
下りの尾根から薮のP1059m
 今回のトレースでわかったことは、この季節の越美国境稜線への登路としては、冠ヶ峠登山道の方が楽だが、取付点が遠いのが難点だということ。
 若丸山へ日帰りで行けることも確認できたが、スキーを有効に使うには、3月中旬までの雪が多い時期に登るか、隣の熊河側からのルートを模索した方がよいかもしれない。
 また、スキーでの下降は両尾根とも、痩せた部分が多く適さないと感じた。谷も急峻でナダレの危険が大きいが、唯一冠山北面、冠谷の右又の雪がこの時期でもつながっていた。滑降の可能性はこの谷以外には考えられないと思われる。('04.4..8歩く)
下りの尾根から林道に降り立つ
TIME:冠林道起点発8.40-郡界尾根取付き9.06-郡界尾根分岐点10.43-p.1059m 11.30-国境稜線JP 12.50--p.1262m 13.22-13.40--JP 14.00--冠林道14.37--置車林道起点15.30