奥美濃 粕川西谷
中又から右又へ '05/6/26

 粕川? それはどこだ?  2.5万図(美束、横山)で射能山(ブンゲン)のあたりを見ると、その南東面がやたらに複雑な地形をしていることに気づく。ぱっと見ただけでは、何がどうなっているのかさっぱりわからない。水線を自分で引いてみて、ようやくおぼろげに地形がイメージできる。これが関西ではあまりなじみのない、粕川支流、西谷である。
 いつもは滋賀県側ばかり、それも雪の時期ばかりウロウロ歩き回っているのだが、今回はこの一見迷路のような谷へ分け入ることにした。わからん時の神頼みとばかり、K仙人に同行をお願いする。

 コースは、3本に分かれた支流のうち、直接射能山へ達している中又を登り、頂上北のコルから右又を下降するというプランにし、このあたりに土地勘が全くないので、前日明るいうちから入る。琵琶湖側から関ヶ原、揖斐、千疋を越え、西谷川林道に入ってからもなかなか先は長い。
 2.5万図にある西谷川林道は、図よりもかなり先へ延びていて、左又と右又の間にある薮尾根の標高850mあたりまで達していた。このあたりのコナラ林もいづれ伐採される運命にあるようだ。夕刻、右又にかかる橋のそばで小さな焚き火をしながらのんびり酒を飲んでいると、下から1パーティーやってきて少し先のスペースでテントを張った。明日はこの地味な谷に2パーティー入ることになる。


あそこから降りようか?
何やらトロピカルな中又
パッと谷が開けると二俣

 右又出合から300mほど林道を行き、道が中又へ近づいて中間尾根へ大きくカーブする地点から薮をかきわけて中又に下る。谷は植物の茂り方がいつも見慣れた谷と異なり、コケの色が濃くうっそうとして、南国のジャングルにいるようだ。しかし流れは明るい花崗岩が主体で歩きやすい。いくつか小滝を越えると、小広い二俣になり、どちらも5mほどのスラブ状の滝となって出合っている。左をとると江美国境稜線の薮こぎがあるので、ここは頂上へ向かう右手の斜滝の際を登る。この先、谷は傾斜を強め、流れも狭くなるが、けっこう岩盤が続き、飽きさせない。大きな岩の下のトンネルを潜ったりしてゆくとようやく源流となり、最後に右又出合から続く中間尾根の薮を少し漕ぐと、奥伊吹からの登山道に出る。頂上までは南へ3分ほどで着く。三角点付近は刈り払われて、伊吹から金糞までひろびろと展望が開けている。

苔むす大岩の下を潜る
歩きやすい所もある
射能山頂ではブヨが大歓迎

 さて、下りはうまく右又へ降りなければならない。江美国境稜線の切り分け道を北東へたどり、中又と右又の中間尾根のピークを越え、次のコルから右手へ強烈な薮へ突入する。少し薮を漕ぐとすぐに細い谷になり、踏み跡らしきものも見つかる。しかし、谷が草むした大きな転石で埋まるようになると、何故か斜面は緩く登りになり、水がなくなってしまう。2.5万図には谷がそのまま流下しているように表現されているので、一瞬谷を間違ったのかと錯覚してしまうが、しばらくで再び水音がして下り出し、一安心。右又最上部は、岩塊で谷が埋まって、ロックフィルダムのようになっているのだ。右又上部は中又同様滝も小さく、ロープの要るような所はない。p.1226へ達する支流との出合近くで、一ヶ所だけ溝状の斜滝(L:40m)があり、ここだけは左岸を巻いて下る。支流と合流後は流れも広くなり、傾斜も緩む。いくつか明るい階段状の滝を越え、涼しい流れを下って行くと、やがて植林帯となり、やや流れが狭まったところを越えると、ポンと林道の橋に下りついた。

ヘンなデザインのナメだな
こいつは左岸を巻き下る
右又下部はのんびり下る

 西谷川の源流は、地図だけで見ているとかなり複雑な地形に思えるが、出合の確認をきちんとしておけば、それほどわかりにくい谷ではない。しかし、どの谷も小さいながら変化に富んでいて、ちょっぴり探険気分が味わえる楽しい谷だ。地図読み訓練をするのにうってつけのところではないだろうか。('05/6/26歩く)

(右又出合発6:05--中又入渓点6:15--中又二俣6:55--射能山頂上9:15--右又下降点10:55--右又出合(置車地)12:35)