曽爾・国見山東北尾根

国見の気分は味わえるのか?

 国見山(三国山ともいう)という山名は、国境の山にはよく名付けられるので、あちこちにあって山名だけではどこの山かわからない。今回のクニミは、伊賀、大和、旧伊勢領の三国にまたがる倶留尊山北方、紅ヶ岳のすぐ東隣の山だ。

 国見山はこれと言った特徴もなく、山頂の展望も全くない悲しいくらい目立たない山なのだが、「国見」という名からすれば、植林される前は展望がよかったのだろう。30年くらい前、頂上から少し北の斜面の植林が若い時分は北の方の展望が開けていた時もある。しかし、杉やヒノキが大きくなった今となっては、「国見」の名前は返上しないと、名前倒れの山になる。国見の北東に伸びる尾根を辿れば、はたして展望は開けているのだろうか?

 東北尾根の末端は、最後には名張川に沿って比奈知ダムのほとりまでなだらかに続いているが、途中、布生と長瀬集落を結ぶ県道の杉坂で一旦区切られる。これより南に布生の奥、白井谷から山姥峠(c.a.580m)を経て上長瀬へ向かう昔の仕事道があったことが古いエアリアマップにあるが、今はどうなのかわからない。取付きはここらあたりがよさそうだ。

山姥峠の上で展望が開けてくる
飯垣内からの尾根の分岐峰
p.818m近くからの名張盆地の眺め
 山姥峠の取付きまでは白井谷の林道が使えるが、林道はどんどん荒れて、もはや終点まで普通のクルマで行くのは困難になっている。終点あたりで峠道を探すが、北東尾根側の斜面は薮に覆われてまったく手がかりがない。しかたなく、少し林道を戻った下生えの少ない植林帯のふみ跡を登る。緩い斜面を標高にして5、60mほど登ると、丸い尾根に乗る。山姥峠の一つ北のピークからの枝尾根のようだ。急な斜面を伝うと山姥峠に出た。林界標はあるが、峠道は使う人もないようで、ふみ跡もどこだかわからない。尾根沿いの仕事道の方がはるかにハッキリしている。薮こぎを覚悟していたが、これなら尾根は捗りそうだ。

 尾根は植林帯の中だが、秋も終わりなので夏のように暗くないのが救い。しばらく行くと、木の間から周りの山が眺められるようになり、名張の盆地が一望できるところもある。国見山頂上も昔はこんな眺めがあったのかもしれない。尾根上のふみ跡をたどると、飯垣内から来る尾根との丸い分岐点ピーク(c.a.790m)に立つ。ここで山姥峠からのふみ跡はいったん途切れるが、東へ少し行くとふたたびはっきりしたふみ跡があり、見通しがいいので詳しい地図読みを強いられるほどでもない。次第に痩せてアップダウンする、東面も明るくなった尾根を行くと、ぽんと予期しない、2.5万図にない林道に出た。どうやら飯垣内の西浦林道から登って来るものらしい。林道があるのにわざわざ薮漕ぎもないものだとばかり、尾根に沿って続く林道を行く。名張川を挟んで、尼ヶ岳や、このあいだ登った見通山の南面が手に取るようによく見渡せる。818mの標高点も捲いて通過してしまい、林道が西浦谷に下りはじめる地点で、仕事道を見つけ、100mほど登り返して稜線に戻る。広くなだらかな植林帯を少し行けば何の事はない、簡単に国見山頂上に着く。林道のおかげで、国見頂上へ達するのは拍子抜けするほど簡単になっていた。簡単だからといって、登りに来る人が増えるような山ではないけれど...。

突然予期せぬ林道が!
見通山〜尼が岳が一望に
国見頂上に怪しい探検隊の古プレートが
 国見山といえば、下りは私の好きな白井谷に取る。...まあ、今日はクルマも下に置いているからだけど、国見山で勧められるコースは、と聞かれるとこの谷が一番だ。何の変哲もない植林の中の谷道だけれど、川沿いの和めるコースなのだ。しかし、国見の頂上から下る場合は注意が必要で、うっかりすると、北西に続く丸い三重奈良国境稜線に迷い込んでしまう。いったん東北尾根を100mほど行き、そこから北へ植林帯の丸い斜面を下って行くと、かすかなふみ跡が出始め、東へ向かう浅い谷に出る。この左岸沿いのふみ跡を少し下ると、「鶯谷」と看板が架けられた白井谷源流に出る。2.5万図には、最後まで白井谷源流を詰め上がる破線路が記されているが、今はイバラの薮に埋もれて通行不能になっている。夏は暗くてうんざりする谷道も、秋は明るくて気持ち良い。地元の方がつけてくれたのか、谷の滝部分には名前の看板も整備されている。ただし、道は今年の台風で荒れていて歩き難いし、渡渉する所ではつるつるよく滑る。ハイキング道とあなどるなかれだ。
1時間ほど谷沿いにゆくと、出発点の林道終点に戻る。
白井谷二股(登りは左又を)
食べようか?話題の杉平茸
こうして見ると、一見立派な滝もある
(04.11.5歩く 時間:置車10:15-山姥峠10:40-790mJP10:39-林道末端11:28-国見山頂上12:15-白井谷経由置車13:13)