鈴鹿 脇ヶ畑 冬の旅

栗栖から権現谷林道へ('06/2/15)

 昨年は積雪のタイミングが悪く、雪の脇ヶ畑へは歩いて登ることになった。雪の良く降った今年は、栗栖からの林道はどんな具合だろうか?

 冬のはじめは、しばらく鈴鹿スカイライン周辺でスキーを楽しんだので、鈴鹿の北へ向かったのは、もう2月の中頃になってしまった。久徳から県道河内線へ入ればあたりは雪景色だと思っていたが、車の窓から見る田んぼには雪が全くない。しまった、今年も時期を失したか、と思いながら栗栖集落はずれの林道起点に車を置く。今日は自転車を持って来ていないので、河内からここまで、6キロあまりの道のりを歩いて戻ってこないといけない。天気予報は今日の後半の雨模様を告げていたので、気持ちはやや重い。気温もなんだか生暖かい。

杉坂峠
杉集落冬景色(525m)

 林道は起点から汚れた雪で埋まっていた。テレマーク靴の準備をしていると上から猟を終えた人が二人下って来た。雪の状況を聞くと、上へ行けば道が露出しているという。今年もタイミングを外してしまったようだ。標高の低い山でスキーをしようとすると、気温や積雪状況にもっと敏感にならないといけない。

 道具はというと、今年から頂き物のMerrellのCATAMOUNTというステップソール板にRivaのケーブルビンディングをつけた。靴はASOLOのローカット、シングルの革靴。テレマークの靴がだんだんアルペン系に近づいて来て、もうこのタイプの靴は市場にみかけなくなってきた。どちらかというと里用だが、軽く仰々しくなくて、いかにもヒールフリーという感じが気に入っている。重い靴はいやだし、移動の手段としてはこれで十分だとも思える。今年はヘタはヘタなりに、これでとにかく押し通してみよう。

 板を担いで舗装された林道を歩く。1kmほど行くと、それでも雪が続き始めたが、杉の倒木がやたらに道を塞ぎ、おまけに日当たりのよい部分で地面が露出して、着脱がめんどうである。結局夏道の踏み跡へ入り、杉坂峠まで腐った雪の上を歩いて登った。板を履いても、なぜか杉坂峠までの西側斜面には枯れた杉枝が雪上に散乱していて愉快な登高は楽しめない。枝の散乱は、風当たりの問題なのだろうか?
 杉坂峠下の杉の古木の並木あたりでゆっくり昼食。杉の林ごしに栗栖や久徳の平野が遠く眺められる。だんだん雲行きが怪しくなって来た。予報通り午後は一雨来そうだ。

杉から狭い谷を室ノ谷出合へ
地蔵峠への道

 スキーをつけ、峠から先へ踏み込むと、林道の雪面は一変する。去年はこのあたりも杉枝が散乱して、まともに滑れたものではなかったが、今年は真っ白な、たっぷり積もったすばらしい雪が続いている。ウロコをシュワシュワ言わせながら、カーブする雪道をゆるゆる下って行くと、すっぽりと雪に埋まった杉集落に入る。暗い空と、その昔伊勢往還の賑わいをみせた面影もない寂しい家並は、さながら「冬の旅」気分。思わず辻音楽師の旋律が浮かぶ。雪の深さで集落の中は道の位置がまったくわからない。地図をにらみながら保月へ続く林道へ入る。狭い谷を抜けると、室ノ谷林道の分岐。静かだ。沢の音と鳥の声だけが聞こえる。

 地図上では、分岐から地蔵峠まではゆるやかな道だと思っていたが、けっこう汗をかく。おまけに、雪の重みで何本もの杉がバキバキ道に倒れていてバリケードになっており、たいへん難儀する。地蔵峠も古い杉の大木と、その根本に古い社があって、脇ヶ畑の歴史を感じさせるが、ここでも杉の太い枝が折れて散乱している。雨雪が本降りになってきた。氷雨の旅というわけだが、このくらいなら雨のスキーもよい。


地蔵峠の祠、杉枝が散乱
雪に沈む保月集落

 地蔵峠から急な林道を滑り降りると保月の集落。ここも雪に埋もれて静まり返った無人境。夏だけ出作りの人が入るのだろう。昔、伊勢近江の通商を扱う問屋まであって栄えていた、という話がウソのようだ。

 保月からは雪が緩んでよく潜り、林道は傾斜がある割には板が走らない。キックしながら歩く。杉林の中を抜けると、台地縁の急崖地になり、林道は谷底まで雪の斜面となっていたり、デブリで埋まった所が多くなる。エッジのない板だと、このあたりの通過が怖いだろう。アサハギ谷の橋を渡ると、昨年も何度か通った道。権現谷林道に下りつくと、谷は両岸の急斜面からの底雪崩で荒れ放題となっていた。土砂岩石で埋まった所も多く、時折バラバラと岩屑が落下する中、大きなデブリは谷の中へ降りたりしてかわしてゆくと、権現橋手前で堰堤工事をしており、去年より手前(奥)で林道は除雪されていた。最初静かで沈んだ、最後には権現谷の凄惨な雪崩跡をめぐる林道スキーはここで終わる。

台地東縁から氷雨に煙る霊仙
暮れなずむアケン原集落

 雨の林道を県道河内線へ出、夕暮れのアスファルト道を栗栖めざしてとぼとぼ歩く。途中、向之倉口でパンを食べていると、河内に家がある親切な人が車に乗せてくれた。感謝しながら、冬の旅の一日が暮れる。(2/15歩く)

(時間:栗栖発11:15--杉峠12:57--杉13:10--地蔵峠--14:05--保月14:25--白谷出合15:22--アケン原16:14--向倉橋17:00--栗栖17:10)