ジャンダルム飛騨尾根再び '96.5
白出沢下部から奥穂西面

 この年は春先に豪雪があり、白出沢はものすごいデブリと倒木で埋っていた。新穂高から天狗沢の出合いに着いたのは昼近くなっていた。重く水を含んだ雪に苦しみながら、ようやく森林限界までたどり着いてビバーク。翌日は病み上がりの体が言うことをきかず、息が切れた。丸1日かかって頭へ抜け出した頃には、ガスと暗さで視界はなくなり、天気は湿った吹雪に変わった。ロバの耳の巻きは氷化し、今までの経験の中で最悪の状態だった。暗闇の中、手探りの懸垂下降を強いられた。続く稜線も強風が吹き、踏み跡は埋もれて、ルートを見つけるのに難渋。穂高小屋へ辿り着けたのが不思議なほど、何度も迷った。このとき小屋で飲んだビールのうまかったこと!

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