光子の日々是好日 金つなぎ

2003年7月

7月8日(火)   晴れ。京都に赴く
午後3時半から、ホテル・グランヴィア京都の大宴会場で「KLCグループ1000店達成記念大会」が開かれる。
新しい仕事の第一歩である。

5時半からは、別室で記者会見が始まった。
記者さん方27人が3列の机にズラリ…、おぉっ〜と、壮観である。
友人の羽田嬢が司会をつとめ、私はマイクを持って、発言者のところにいち早く駆けつける。

羽田嬢こと羽田雅子さんとは、20年来の友人である。
サンケイリビング新聞に入社してすぐのころ、当時まだ珍しかったマーケティング会社の有能なマーケッターであった彼女は、キュートな美少年の雰囲気を漂わせ、私より10歳も年下ながら、ずっとずっと世間を知っていて、教えられる事が多かった。
その彼女が今年の6月、「広野さん、小さい仕事を整理して、手伝って!」と言ってくれた。
それが、お酒の流通コンサルテーションの大手、株式会社KLCの広報の仕事である。

羽田嬢は、ビッグウェーブ・インタナショナルの社長にしてKLCの子会社インフォ・デスクの重役という、いまノリノリの実務家だ。
私たちは6月いっぱい、在阪のマスコミ各社を回って、KLCのニュースリリースを届け歩いたのだった。

達成感が充実感になって、体の免疫力を上げてくれるのが、実感される。
快く 我に働く仕事あれ それを為遂げて 死なむと思ふ (石川啄木)
それを為遂げて、生き延びる私がいる…。

エルイン京都(泊)

起床:午前8時、就寝:翌日午前2時半

7月9日(水)   晴れ、夜に入って雨しとど…。今日も京都にいる
昨夜は、楽しかった。

ホテルグランヴィア京都でのイベントを終え、マスコミさんやスタッフさんらと祇園に繰り出し、一つのことが総力で達成できた満足感に酔えたから…。
この年齢(とし=62歳!)で、この体(多重がん、高血糖・高脂血症ほか!)で、自分のライフワークの場に仕事が見つかったから…

午後8時。テレビ大阪の西村プロデューサーの案内で祇園名代の「きしめん」を食べに行く。
芝居の書割にあるような町並みを、羽田嬢と3人でそぞろに歩いて行く。

鰹だしのよく利いたきしめんを、ふうふう、ふう…、美味!

店を出たところで、「開(あ)いてるかなぁ?行ってみましょか」と西村さんが言って、西村さん行きつけのお店を覗くことになった
四条花見小路を少し下がったあたり、三味の音が聴こえそうな静かな落ち着いた町並みが広がる。
暗い道の両側に、芸妓置屋さんが軒を並べて静まっている。
…京都って、ホント懐が広いんだなぁ。

西村さんは、とある格子戸を構えた落ち着いた風情の家のチャイムを押した。
「西村です…」、「どうぞ…」のやりとりで格子戸が開き、同行3人、お香が焚きしめられた玄関からすぐに2階に上がる。
と、…これは、これは!
年の頃なら17〜8歳…。妙齢の美女が少しく首をかしげ、重ねた両手もたをやかに、微笑みながら和服姿でのお出迎え!
現役の記者時代に、夜な夜な大阪・北新地に出没し、1席5万円(座るだけで…)と言われた、バブル当時でも目を剥くようなお店にも連れて行ってもらったことのある私が、「えっ?」と絶句したその店の名は「ぎをん稲本」。

「おいでやす。久しぶりどすなぁ」
妙齢の美女は、現し身のン十歳!!!!!!に姿を変え、はんなりと絨毯に座った。
※あ、申し遅れましたが、はじめに出迎えてくれた美女は、芸妓時代の若かりしおかみさんの写真。失礼しました。

芸妓時代の源氏名を「ひろ栄(ひろえ)」と言い、その道ひと筋、ン十年!!!
悠悠自適の老後は自宅を開放し、若々しく爽やかな京都大学生7人を夜のアルバイトに活用して、このお店を切り盛りしているという。

階段を上がった左手には座敷、右手には大正浪漫におかみの少女趣味が程よく溶け合った応接間とバーカウンターが…。
カウンターの中には、イケメンの京大生が、いなせな風情で注文を待っている。
水割りを注文し、「さすが! 西村さんのお店…」と乾杯。 喜杯を重ねる。

西村聡さん、京都育ちの男伊達。父上は華道・池坊の重鎮だったひとだが、親子二代の反骨・剛毅な性癖を、色白・丸顔、はんなりとやわらかな物腰に隠して人生を語る、まことに”熱い"お人ではある。西村さんとは、「金つなぎの会」を取材して頂き、その後も親しいお付き合いを頂戴している。  ありがたいことである。
※西村夫人・ゆりさん(同志社女子大学講師、NPO「光の音符」代表)も、メッチャ"熱い"お人だ。彼女の痩身・小柄な体躯に溢れる、素晴らしきダイナミズムについては、また、今度に…

「この間、やしきたかじんさんが来やはって…、"たかじんや、6人や…"って言わはったんどすけど、"ウチは、一見(いちげん)さんは、してしまへんよって…"って言うて、帰ってもろたんどす」
優しくも凛々しき、おかみの心意気や、善し! たかじん敗退、「技あり、1本!」
その夜、天下のやしきたかじんは、あっさり引き下がったという。
※この話、たかじんの大きさを伺わせる後日談もあるが、それはまた、今度に…。

さて、付き出しは黒光りした黒豆。その味わいの程のよさに、水茄子と大根の漬物の小粋な取り合わせも上々で、興に乗ったおかみさんが三味線を弾けば、私がとつぜん、小唄「梅は咲いたか」「梅にも春」を唄いだし、西村さん、羽田嬢に驚かれたりして、京の夜は静かに更けた。

これはこれは…の、得がたい非日常。
なんと、有難いこと!

雨の京都の夜の道。なぜか楽しくて、羽田嬢と笑いながら、濡れて歩いたエルイン京都(泊)の昨夜、重ね重ね、楽しかったなぁ。

起床:午前8時、就寝:翌日午前1時

7月16日(水)   晴れ、金つなぎ・ふれあいサマークリスマス
金つなぎの恒例イベント。夏の非常識…じゃなかった、非日常!
「金つなぎ・ふれあいサマークリスマス」!!!

名張駅から、若旦那、書家の一光先生とともに大阪第一ホテルへ。
一光先生は「うきさとむら・蛍狩り」に毎年サポーター参加。するうち、肝臓がんを発症されるや、なんと病院のベッドから電話を下さった。
「広野さん、有難う。金つなぎに命を貰ったよ!」と。
毎号お届けしている機関紙「季刊・金つなぎ」に励まされ、うきさとむらで出会った病友の闘う姿に思いを馳せつつ抗がん闘病を勝ち抜いて来られた一光先生、感懐もひとしおであろうと思う。

華やかなホテルの会場に、自分なりのおしゃれをした病友が続々と集まってこられる。
新潟から参加の光子さんは、ロビーの片隅でおなじみのミニ・ギャラリーを開設。東京からはgreeenさんが、逝かれたばかりの兄・省三Drの思い出をいっぱい持ち込んで…

高松からより子さん、徳島から佳さん、名古屋から玉ちゃん。

お膝元からは、7年前、片肺で参加の度にぶっ倒れてた魚屋の大将・大造さんとしっかり者の奥さんが、今では、るんるんで。
一方、果敢に抗がん闘病中の金の玉ちゃんは、美しいスキンヘッドでVサインだ。実際、試用した新薬ゼローダが奏効し、主治医の武田力Drが、また学会発表なされるとのこと。
玉ちゃん、やったね。   がん奴、恐れ入ったかっ!

ゲストは第一ホテルの吉本晴彦会長、晴之社長、中小企業同友会「百歳の会」宮崎信敏代表、書工房「慶樹」辻良樹代表夫妻、NHK京都放送局の金澤孝年氏、ビッグウェーブ・インタナショナルの羽田雅子代表。ほかに、さをり織りの城みさお代表ら12人の皆さま。
…有難うございます。
城さんらは、金つなぎの病友エミコ・シールさん発案の、さをり織りの”抗がん帽子"を届けに来て病友を喜ばせてくださった。
…有難うございます。

食事・歓談のあと、若旦那提唱の「広野光子・音楽葬」に備えて、みんなで森山直太朗さんの名歌「さくら」の練習を。
言い出しっぺの若旦那と竹内節子理事が懇切丁寧に歌唱指導を担当。 いいなぁ!「金つなぎ・音楽葬」。

死は、格別の非日常で、一見非情で辛い恐い孤独な体験だろうけれど、死に赴くことは、例えば隣の部屋に行くようなもの…と考えてみたらどうだろう。
戻れない隣の部屋だけれど、ドアの向こうには翩翻(へんぽん)と翻(ひるがえ)るピンク地に紺色文字も凛々しい「金つなぎの旗」と「理念旗」。
そして、お先に逝かれた病友がたが、あの、ピンクピンクのハッピ姿で、双手を挙げて私たちを迎えてくださるのだ。
「いらっしゃ〜い。待ってたよぉ!!!」
私にはその晴れやかなシーンが、実に鮮明に見えている。
私がいま死ぬ事を決して怖れず、次の世での再生に希望を託しているのは、実に、逝かれた病友がたのこの、明るく力強い歓迎ぶりが信じられるからに他ならない。

病友との絆のおかげ、絆を結ぶ、数々の非日常イベントのおかげ!
羽田さんの絶唱「愛の讃歌」に酔いつつ、お開きまで…

      ≪特記事項≫ 
1.NHKラジオ深夜便の上野重喜ディレクターから頂戴した芳醇な赤ワイン!
2.新座市の恭子さんから贈られた"勝ち鬨"の銘菓「はたざくら」!
3.今日の次第を密着取材をしてくださった、名古屋テレビ「スーパーJチャンネル」の鍵谷千江子ディレクターと撮影クルーの皆さま!
放送は、7月29日(火)の午後6時〜、「スーパーJチャンネル」でとのこと。

いずれもうれしいうれしい、病友がたの潜在意識下の非日常!
皆さま、どうも有難うございます!!! 。

起床:午前8時、就寝:翌日午前2時半

7月19日(土)   晴れ。風と光の舞い込む、大ぞのオフィスへ
15年来の友人、大ぞの千恵子さんが大阪に帰ってきた。

健康食品・ミキプルーンの販社を経営。全国で一、ニの売上を残す経営者。小島孝治ユニチカバレーボール部総監督(全日本バレーボールチーム総監督)夫人ほか、綺羅星のごとき人材を率い、大阪を拠点にしていた15年前から大ぞのさん、ず〜っと輝き続けている。
彼女とは、劇団「ふるさとキャラバン」の上演を通じて親しくなった。
健康食品を扱っていながら、一度も勧められた事がないのも気に入って、長いお付き合いをさせてもらっている。

その彼女が、阪神大震災でオフィスにしていた芦屋の高級マンションの倒壊に遭い、地震のトラウマから逃れるように、東京に本拠を移して、はや8年。
なんと、このたび大阪・天神橋商店街のド真ん中に、白亜のビルをおっ立てた!
「披露のパーティ、ぜひ、来てね」、「は〜い、楽しみにしてるわ!」とやり取りはあったが、まさか! こんな凄いことをやってのけるなんて…

大阪一長〜い商店街が天神橋商店街。下町の熱気でむせ返るそのアーケード街の中ほどに、大ぞのビルはあった。
ビルの中に前庭があり、鉄製の梯子階段で4階まで上るしつらえだ。
階段も踊り場も、手すりなど一部を除いてぜ〜んぶ木製。足への響きの優しい、不思議なアプローチである。
しかも吹き抜けだから、光も風も自在に訪れる…という心憎いデザイン。室内にはもちろんエレベーターもあるが、断然階段で上がるのがいい。
雨の日は傘を差して3階へ、4階へ…!  うふふふ〜♪
2階のギャラリーでは、大ぞのさんの友人でタレントのりりあんを囲んで笑いの輪が広がっている。

各階のフローリングは竹の集成材で、テーブルも同じ素材。さり気ないこだわりが随所に隠されているのを見つけるのも、なかなかに楽しいものだ。
屋上には植物園を作る計画だそうで、兵庫県立淡路景観園芸学校の望月昭主任専門員が生徒さんたちと。
「キーウィとか、ドリアン、パパイヤなんかのフルーツもぜひ!」とつい余計なことを言って、でも、屋上が"食べられる植物園"だなんて、いいよ、ね。

「デザイナーをご紹介するわ。こちら、石丸信明先生。安藤忠雄先生のところに13年ほどいらした秀才よ。お友達だから、設計料もお安くしていただいたわ」大ぞのさんは、ドキッとすることを、いつものように笑いながら軽やかに言ってのけた。

大阪天満宮の豊かな森を見下ろしながら、実に爽快な気分になった。
夏、真っ盛り。   ほんとうは、じとっ…と暑かったんだけど、ね!

起床:午前8時、就寝:翌日午前1時半

7月29日(火)   晴れ。大阪〜奈良〜京都へ
KLC広報の仕事で、前泊の大阪キャッスルホテルの会議室で早朝会義。午前7時〜9時。
その後タクシーに分乗して、大阪商工会議所に赴く。
KLCの子会社リカーマックスの「酒販セミナー」。報道各社さんのほか、テレビ大阪・畝本記者と報道クルーの取材も入って熱気が感じられる。
途中、抜け出して奈良の中谷酒造に向かう。
東京「ワールド・ビジネス・サテライト」の取材アテンドのため…。
午後3時。京都のKLC本社に戻り、屋内の取材と木村周二代表へのインタビュー立会い。

午後6時から、名古屋テレビ「スーパーJチャンネル」で"金つなぎ"が放送されたらしく、視聴者から携帯にTEL相次ぐ。
今夜から引越しの手伝いに堺の長男宅に行く予定を急遽変更、午後8時半自宅に戻る。
視聴者さんからの連絡、留守番電話に8件。

起床:午前6時半時、就寝:11時半



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