旅の手帖 連載「海からのメッセージ」(第11回)
   97年2月号)  


アマゾンの6つの怖い動物
中村 元

 星降るアマゾンの真っ暗闇、木にダラリとぶらさがるミツユビナマケモノをバッテリーライトで照らしながら、船のクルーが教えてくれた、世にも恐ろしいアマゾンの危険な動物ベスト7をご紹介しよう。あくまでもアマゾンの民の話であって鳥羽水族館の見解ではないので誤解無きように…。

 1番怖い奴…ヘビ:アマゾンのヘビは必ず毒蛇だから用心しろ。でも咬まれても病院にはたいてい全ての血清がそろっているから安心していればいい。ただし忘れてはならないのは、咬まれたらそのヘビを捕まえて病院に持参することだ。そうしないと種類が多すぎてどの血清を使えばいいか医者にも分からないからな。
(想像してみるがいい、ヘビに咬まれて息絶え絶えで病院にたどり着いたら「咬まれたヘビを捕まえて出直してきなさい」と言われるのだ。これは確かに怖い。)

 2番目に怖い奴…淡水エイ:アマゾンは海みたいだからエイだっている。朝晩には浅瀬に集まってきているから川に入っちゃだめだ。こいつの毒バリにさされると強烈だぜ。2日は何をやっても痛みがとれない。でもただ一つだけ方法がある。若いセニョリータのアソコに刺された部分をあててれば治るんだ。
(じゃあ、もし自分の大事なところを刺されたら…なんて考えてしまう自分が怖かったりする。)

 3番目に怖い奴…デンキウナギ:大きい奴は川の深いところにいるから怖くはない。怖いのは木の実を食べているまだ小さい奴だ。奴らがどうやって木の実を落とすか知っているか?川岸に生えている木の根っこに電撃を与えるんだ、すると木はビリビリ震えて、その振動で木の実が落ちてくるってすんぽうさ。だから川岸の木に寄りかかったりしたらだめだ、感電死しちゃうよ。
(デンキウナギは650ボルトなんて発電記録があり、電流に弱い馬はよくショック死するらしいというとんでもない魚であることは事実なのだが…小さい奴が木の実をたべるなんて初耳だ。でも大きい奴は危険じゃないというのがなんとなくホントっぽさをかもし出していて怖い。)

 4番目に怖い奴…ワニ:アマゾンのワニは小型の種類が主流だし、しかも顔に似合わずかなりジェントルだ。しかし卵が埋まっている巣には注意しろ。卵は産み落とされてから30日3時間30分たつとふ化する。そのあいだ母ワニはじっと見張っていて、近づく者すべてを咬み殺してしまう。ふ化した子供たちは母ワニがそっとくわえて川まで運ばれて育てられるのだ。
(これはほぼ事実、時間だけが眉唾だ。でもワニの方がブラジル人より時間に正確だということだけはきっと間違いない)

 5番目に怖い奴…ピラニア:こんなものは、めちゃ怖いというもんじゃない。怖いのは乾季で水がないときだけだ、エサがなくなってピラニアだけがうじゃうじゃ残ってしまった水たまりに足を入れるなんて馬鹿なことさえしなけりゃいい。映画みたいに川に落ちるたびに人があっという間に喰われるほどピラニアがいたら、アマゾンに他の魚が住めるわけないぞ。
(そりゃそうだ!と納得し、翌日私はネグロ河の真ん中に飛び込んだのだった。)

 6番目に怖い奴…カンディール:カンディールとは悪魔の魚という意味で、本当の意味でこいつが最も恐怖の魚だ。ドジョウを小さくしたような形をしているのだが、こいつはなんと人間の耳や肛門などの穴に入り込んで、内蔵を喰いあらすのだ。特に女性はカンディールが入り込みやすい手頃な穴を持っているから危険度が高い。(そんな時でも感じ〜る?と洒落てみたがブラジル人には伝わらなかった…トホホ)
 そのためにインデオたちはカンディール避けの女性用の木のパンツを発明した。そいつは博物館に行けば見ることができるよ。(これはホントの話しだ。もしかして日本のどこかの博物館にも展示してあるかもしれない)

■アマゾンの危険な動物に会えるところ:魚類はカンディール以外なら、たいていの水族館で会える。ヘビの方も動物園で会えるだろう。なんせアマゾンの動物たちの不思議さは、地球の秘境の世界として、世界の人々の心を魅了してやまないのだから。

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(C) 1996 Hajime Nakamura.

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