地球流民 |
むかし昔から10年くらいたった昔。あるお屋敷におじさんとおばあさんと鬼退治から帰ってきた桃太郎が住んでいました。 おじいさんとおばあさんはすっかり有名になったキビ団子を作って売り、桃太郎は鬼から奪ってきた宝物を元手に株をやって儲け、そして庭では桃太郎の家来になった犬、猿、キジが、毎日武道の稽古をしていました。 そんな平和なある日、隣の村から使いがやってきました。 「桃太郎さま、桃太郎さま。このところ村に異形の者どもが現れ、お城や民衆を襲うので困っています。どうぞあの鬼退治のように私たちの村の鬼を退治して下さい」 待ってましたとばかり、桃太郎は引き受けました。 もう体が、うずうずしてたまらなかったのです。 桃太郎は、家来たちを呼び集めました。 「今から隣の村の鬼を滅ぼしに行くからついてこい!」 そうして桃太郎たちはおばあさんからキビ団子をもらい、さっそく隣村にある鬼の隠れ家に向かいました。 桃太郎たちはその道中で、ネズミに会いました。 「桃太郎さん、桃太郎さん、私も鬼退治のお供をしますから、お腰につけたキビ団子を一つ私に下さいな」 桃太郎は答えました「だめだ、だめだ。もう戦力は十分に足りている。だいたいおまえのようなチビにはなにもできないだろう。でも戦を見たいというならついてこい。」 ネズミはみんなの後ろをチョロチョロとついていきました。 次に会ったのはイノシシでした 「桃太郎さん、桃太郎さん、私も鬼退治のお供をしますから、お腰につけたキビ団子を一つ私に下さいな」 桃太郎は答えました「だめだ、だめだ。もう戦力は十分に足りている。だいたいおまえのようなノロマにはなにもできないだろう。でも戦を見たいというならついてこい。」 イノシシはみんなの後をノソノソとついていくことにしました。 さて、鬼の隠れ家に来てみればそこは洞窟になっています。前回とはずいぶん違うので桃太郎たちは少しとまどいましたが、日の本一の一行ですから恐れることはありません。手の使える猿が松明を持ち、鼻の利く犬が先頭になって洞窟に入っていきました。 「ガハハー!桃太郎、待っていたぞ」突然大きな声が響きわたります。 松明の光に浮かび上がったのは、見覚えのある鬼ではなく巨大なタコ入道でした。 「よし、進めー!」戦いの始まりです。 まず犬がわんわんと吠え足に噛みつきます。しかしタコ入道の足は8本もあって他の足に投げ飛ばされました。 キジは鬼にやったように目をつつこうとしましたが、暗いものですから鳥目のキジは相手の顔がよく見えません。 猿は飛びかかってひっかきますが、タコ入道の頭はつるつるで、爪がするりするりと滑ってしまうばかりです。その上持っていた松明まで落としてしまいました。 タコ入道は8本の足で8本の刀を抜き、桃太郎に迫ります。万事休すです! その時、後ろで見ていたイノシシが桃太郎に言いました。「桃太郎さん、私の背中に乗って下さい」イノシシは松明をくわえ、桃太郎を乗せてタコ入道の足をかいくぐります。 ネズミが仲間を800匹連れてやってきました。 「チュウチュウ、私たちは暗いところでも目が見えます。」 最初のネズミがキジの頭に乗って指示を出して攪乱します。 他の800匹のネズミたちはタコ入道の足にそれぞれ100匹ずつとりついて、がりがりと囓り始めました。犬と猿もここぞとばかりにもう一度襲いかかります。 さしものタコ入道もこれにはたまりません。逃げようとするところを、桃太郎を乗せたイノシシがどっすんと体当たり。 タコ入道はひっくり返ってしまいました。 「ぐわわわわ・・・こうさん、降参!もう悪いことはしません。」 めでたくタコ入道を退治した桃太郎たちは、山のような宝物を引いて洞窟から帰ってきました。 「ネズミ殿、イノシシ殿、先ほどはすまぬことを申した。世の中には様々な鬼がいる。それに勝つにはまた様々な力が必要なのだということがよく分かった。褒美に、この中から好きな宝物を持って帰るがよい」桃太郎はネズミとイノシシに詫びました。 「いえいえ、桃太郎さん、それにはおよびません。私たちも鬼退治のお役に立ちたかっただけですよ。宝物は村人たちに返してあげて下さい。そして私たちには、あのおいしそうなキビ団子をくださいな」 桃太郎はキビ団子を袋から出して、みんなと一緒に食べました。 最初の鬼退治に出かけた時と同じキビ団子でしたが、一緒に食べるメンバーが増えた分、いっそうおいしくなったように感じました。 |