RAMPO Entry 2009
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2009年3月12日(木)

書籍
ミステリーとの半世紀 佐野洋
2月25日初版第一刷 小学館
B6判 カバー 320ページ 本体2000円
著:佐野洋
初出:本の窓 2003年5月号−2008年6月号 小学館
関連箇所
数学・天文学・探偵小説(p.6−11)/隠れファン(p12−18)/趣味は探偵小説(p24−30)/怪物・江戸川乱歩(p71−75)/『銅婚式』の批評(p75−82)/乱歩さんとのこと(一)(p83−88)/乱歩さんとのこと(二)(p88−94)/乱歩さんとのこと(三)(p94−100)/乱歩さんとのこと(四)(p100−106)/乱歩さんの死(p179−185)/乱歩さんとのやりとり(p186−191)/事件の論評(p305−311)
エッセイ

 四年にわたって連載された佐野洋さんの回顧録が刊行されました。半世紀というのですから『探偵小説四十年』より十年も長いわけですが、『ミステリーとの半世紀』とタイトルに「との」が入っている点に注目されたい、と佐野さんは述べていらっしゃいます。「最終回にあたって」から引用。
 
 『探偵小説四十年』は、言うまでもなく江戸川乱歩さんの著書である。それに比べられるのは光栄だが、乱歩さんと私では、格が違いすぎる。乱歩さんの歩みは、そのまま日本の探偵小説の歩みであり、だからこそ、どんなことでも書き残す意味があった。
 一方、私はずっとミステリーを書き、またそのときどきのミステリーについて、感想、批判を続けてきたが、それはあくまでも、自分が書きたい形式の小説、あるいはそのときどきの個人的な考えに基づく感想・批判であり、「私の歴史=日本ミステリー史」というようなものではない。
 そして、ミステリー史については、中島河太郎さん、山村正夫さんに著作がある。それとも重ならないようにと考えて、私が志したのは、「私自身が興味を持った事象、作家、作品についての回顧」といったものであった。
 タイトルにおいて注目していただきたいのは、そこに「との」という言葉を使っていることだ。
 乱歩さんが敷いたレールがある。そのレールは、ときどきの社会の動きによって、いくつかの支線に分かれたが、とにかく現在まで続いて来た。私は、その支線の一本の上を、五十年近く歩いてきた。歩きながら眺めたことを、思い出すままに書いてみよう。
 そんなことが、この連載開始の際の心境だった。そして、今年は二〇〇八年、私が第一作の『銅婚式』を書いたのが、一九五八年だから、ちょうど半世紀という計算である。
 
 小学館:ミステリーとの半世紀
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