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2009年6月11日(木)
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●雑誌 | |
文學界 7月号 | |
7月1日 文藝春秋 第63巻第7号 A5判 360ページ 本体952円 |
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夙川事件 −谷崎潤一郎余聞− 小林信彦 | |
小説 p64−85 |
「創作」と銘打たれていますから小説にカテゴライズしましたが、宝石社勤務時代を回顧するエッセイとも読め、「回想の江戸川乱歩」の番外篇と位置づけることも可能でしょう。タイトルから容易に察しがつくとおり、渡辺温が昭和5年、谷崎潤一郎の家へ原稿依頼に赴いた帰りに西宮市夙川の踏切で事故死した「事件」がモチーフ。「宝石」の編集部で結局は実現することのなかった谷崎と乱歩の対談が企画されていた昭和34年、戦前の博文館で編集者として鳴らした真野律太が宝石社で校正の仕事に就いていたという探偵文壇意外史めいたエピソードが紹介されたあと、「新青年」を手がかりとして読者の前に夙川事件がゆっくりと姿を現してくるのですが、ここには乱歩が登場するシーンを引用いたします。 | |
夙川事件 −谷崎潤一郎余聞−
小林信彦 乱歩が会社に姿を現わすのは、月に一、二度だった。 |
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ラストではちょっとした一人二役が明かされて、やはり小説ならではの余韻を残す、といったことになるのかもしれません。サブタイトルには「谷崎潤一郎余聞」とありますが、「『新青年』余聞」でも通用しそうな一篇。「文學界」は一冊千円もしますから、乱歩ファンは立ち読みをどうぞ。 | |
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