山の貧民生活落穂集 その2

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沢用パンツスーパーマン私の靴遍歴地下たび最新装備抵抗派?

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沢登り用のパンツ

 沢登りに使うパンツは、何と言ってもポリエステルのジャージに限る。
水切れもいいし、何より濡れても足が自由に動かせる。伸縮性の少ない生地のパンツだと、足にまつわりついて、ゴーモン状態になり、ただでさえ枯欠しているスタミナをますます消耗してしまう。

 いいことづくめの安価なジャージだが、一つだけ難点がある。それは濡れると重くなってだんだんズリ落ちてくること。原因は、そう、パンツの腰回りがゴムだから。放っておくと、御殿袴になってしまい、しょっちゅうズリあげていなくてはならない。いいオヤジが沢でジャージをずりあげてばかりでは、絵にはなりません。沢用ジャージには、ベルト通しをつけましょう。

 え? 自分では無理だって? 配偶者様にお願いするっきゃないじゃないですか?「沢であなたの連れ合いが半ケツ状態になっても、世間は許すと思いますかあ?」なんてね。

私はスーパーマン! --- 古いおじいギャグですんません

 タイトルからご賢察のとおり、山の衣料はずっとスーパーの衣料でまかなってきた。したがって、スーパーマンの異名をとっている。...自慢することではないとは思うが...。

 繊維素材加工技術を駆使した機能性衣料を無視するわけではないのだが、今までこれで何の不自由も感じない...。---厳しい山へ行っていないから当然だ! という説も一部であるが...

 なんてことをホザいていたら、ウチの連れ合いが言いました。「もうトシだから、山でも身だしなみをキチンとしなはれ! 年寄りが身なりをかまわないと、汚らしい!」だって。

 こいつはごもっとも。これからは、衣料調達先をユニクロに変更して、少々身なりをかまうことにいたします。
(...え?、あまり変わらんな、だって?)

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 地下たび --- まるビの靴遍歴1

 沢登りには地下足袋わらじ、というのは30年前ではジョーシキだっただけど、松本竜雄さんの本など読んでいると、そのまた昔は、谷川のルート開拓でも、クレッターシューズがわりに地下足袋を履いていたそうだ。アブミに乗ると土ふまずが痛かったろうな。細かいホールドに立ちこむのが怖かったろうな、なんて要らぬ心配をしてしまった。

 そんな古典的履物を常用の履物にしているので、曽爾の山などへフツーのハイキングに履いていくと、他の人はどうも気になるらしくて、よく注意を受けることがある。これこれ、そんな足周りで山を登ると、足を傷めるよ!だからトーシロはダメなんだ、てな具合。こういう教育的指導を賜ると、もう平謝りするしか、手段はないのだ。蛇足だけど、可哀想だから靴をあげよう、と言ってくれるヒトにはいまだ会わない。そんなシンセツな警告を発してくれる人は決まって、ハイキングコースにブランドもののエキスパート用登山靴を履いているのが面白い。(...いえ、決してヒガミでは...)

 
靴はだいじだ  ---まるビの靴遍歴2

 お金が(今よりもっと)なかった学生時代、安物の登山靴(もどき)で白山の春山合宿に参加した。
当時('68)ナイロンのオーバーパンツも買えず、上はビニロン製ヤッケ、下は古い学生ズボンを2枚重ね着といういでたち。米軍払い下げのフェザーの寝袋と安物の山靴が、それでも一番高価な装備だったのだ。(当時でも、ナイロン衣料が世に出たことでも有名な、エルゾーグのアンナプルナ隊の快挙から20年ちかく経っているのにね..**は悲しいね)
 創設間なしの山岳部じたいも超ビンボーで、冬テンもなく、雪洞と小さな「ないよりはマシ」というツェルトだけが頼り。
 合宿は白山の南方稜線。越前勝原から鳩が湯、小池を経て加越国境へ上がり、三の峰、別山経由で御前峰へ達するというものだった。

 入山三夜目、三の峰下で雪洞泊だったが、その夜は雨が降った。ただでさえ、湿った雪は水分飽和状態で、雨には無力だった。床は氷なので、朝起きると全員エアマットの上でプカプカ浮き上がるほどの水浸し状態。幸い上の小池に1日目に泊まった植林作業小屋があったので、ぐっしょり濡れねずみになって退却した。
 沈澱の1日をおいてまた三の峰下へ上がった。その翌日、別山までガスの中を登ったが、このとき足指(特に親指)が軽い凍傷になった。靴の甲皮が粗悪で水分がしみ込み、おまけにアイゼンバンドを少しきつく締めただけでも血行が悪くなったからだ。幸い医者にかかるまでもなかったけれど、半年くらい痺れが直らなかった。お風呂での足指マッサージがながい間必要だった。
 これに教訓を得て、バイトの金がはいると、親を騙して得た金もあわせて、すぐさま京都ヨシダへ登山靴を誂えに走りました。カネより足が大事です!(父上、母上、申し訳ございません。参考書買えませんでした。)

教訓:雪山では、手袋と靴は自分にあった、よいものを履きましょう。

アイゼンもワンタッチ式になり、靴の素材の改良も進んだので、いまどきこんな教訓は時代遅れですね。

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 最新装備抵抗派 -- というと聞こえはいいが...

 20年ほど前、プラブーツが普及しはじめた頃、山屋の反応は大別して二つの態度に別れた。一つはすぐに飛びついたヒト、片や批判的だったヒト。

 私は、言うまでもなく後者。理由はいろいろある。高くて買えない。まだLOWAが履ける。足が不自由そうだ。長い林道歩きが辛い...エトセトラ、エトセトラ。しかし黙っていたけれど、春山なぞ湿った雪山では羨ましかったこともたしかだ。

 先進装備早期導入派のWさんは、導入を渋る私にこう言ったものだ。「最新技術にカネを惜しむようじゃあ、一流にはなれんわな!」。くやしいけれど、言えてる。だっていまだに発展途上だもの。

 LOWAが履けなくなったとき、プラブーツは山靴のラインナップのなかで一番安くなっていた。で、プラブーツ派に転向した。そのプラブーツは5年でソールが剥がれてしまった。今は、ユーザの用途に応じて履き分けることができるし、なかでもハイブリッドの靴は軽くてよいと思う。

 とにかく、先進的な装備には物心ともに臆病なのが、凡庸三流登山家の宿命と心得たり。

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