月出川 ワサビ谷
 三峰の南面(櫛田川流域)も奈良県側と同様、植林が進んでいて興味ある谷はなさそうに思える。そのなかで月出川上流のワサビ谷だけが谷相も深く、異彩を放っている。

奈良県側からのアプローチ、新道峠の石地蔵

 この谷へ取り付くのは飯高町から月出林道を経由するのが自然だが、筆者は奈良側から、新道峠越えでアプローチした。取付きは、新道峠から一般路を下って、ワサビ谷に出た地点。谷の周囲は荒れた植林帯で、みかけからすると、この先に滝を持つ谷があるとは信じがたいものがある。

 ワサビ谷入谷点付近。どう見ても凡谷にしか見えないが、崩壊が激しい様子はわかる。

 谷は、下部のゴルジュ状の連瀑部、中間部の暗い滝と小ゴルジュ。詰めのブッシュの多い岩場、それにそれぞれをつなぐ平流部でなっており、屈曲が多く、傾斜の変化にも富んでいて、短い割には充実した遡行ができる。おまけに詰め上がれば、美しい八丁平に出られるのも気持ちが良い。

:最初のゴルジュ。連瀑となっている。右手をからんで越える
:二つ目の滝は小さいながら両側が立派。左手から取り付き、落ち口下で右手へ移って、すぐ横を登ることができる

 それぞれの滝場は、ルートが限られるのでルート探しに手間取ることはないが、変化の多い地形に柔軟に対処する能力は必要になる。沢慣れた人でないかぎり、単独で入ることは慎みたい。また、メンバーによっては、一部ロープが必要になるだろう。夏期は樹林がかぶって暗くなるので、やはり春、秋の遡行が快適だ

 ゴルジュ出口にかかる大岩の滝。乾いているので中央を快適に登ることができる

:平流を進むと、7mほどの直瀑に。両岸とも捲くのが困難
:直瀑手前右岸を捲くが、ここも倒木だらけで、岩盤がむき出しになっている。崩壊しそうで危険を感じる

:しばらく行くと、前方に明るい岩場が見え、小さなゴルジュ帯となる。右岸を小さく捲いて越える
:ふたたび平凡な流れになる

:谷は徐々に傾斜を増し、階段状となる
:一見樹林の中の岩場に谷が吸収されるように見えるが、水流は滝となって続いている

:傾斜が落ちてくると八丁平が近い
:水量もなくなり、すっかり穏やかになると八丁平だ。水がなくなり、ゆるやかな笹原を登るとハイキングコースに出る