人外境主人残日録 2010
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2009年12月
2010 平成22年
3月
3月1日(月)
「キャタピラー」原作問題をめぐる見解
3月2日(火)
週刊誌八冊を購入して気になるお値段は
3月3日(水)
「キャタピラー」英文レビュー意味不明
3月6日(土)
「キャタピラー」の話題をもうちょいと
3月7日(日)
乱歩は「キャタピラー」をどう眺めるか
3月11日(木)
名張市が誇る豪華乱歩イベントへどうぞ
3月12日(金)
富山市ではこんなイベントがあるようで
3月13日(土)
文芸誌〈アピエ〉最新号は乱歩特集です
3月16日(火)
このところややばたばたしておりまして
3月23日(火)
ミステリ講演会は春の嵐とともに去りぬ
3月24日(水)
いとうさんと奥泉さんが乱歩で文芸漫談
3月25日(木)
きょうもきょうとて手抜きでござるの巻
3月27日(土)
こんなヴィジュアルがひっかかってきた
▼2月2日(火)
探偵小説史にみずからを位置づける試み
▼2月6日(土)
いろいろあら〜な→※ただし本格に限る
▼2月7日(日)
第一人者にお墨付きを与えるポジション
▼2月8日(月)
乱歩はいかにして安定を取り戻したのか
▼2月10日(水)
まったく意味不明の図式に説明を加える
▼2月12日(金)
水平性から垂直性への避けて通れない道
▼2月14日(日)
絵探しのエピソードはなぜ封印されたか
▼2月15日(月)
若い小父さんはどうなってしまったのか
▼2月16日(火)
『探偵小説四十年』をいかに読むべきか
▼2月17日(水)
乱歩最大のトリックだといいたいのだが
▼2月18日(木)
映画の原作をめぐるごくささやかな疑問
▼2月19日(金)
原作から下敷き、モチーフ、先行作品へ
▼2月21日(日)
寺島しのぶさんの最優秀女優賞を祝福す
▼2月22日(月)
「キャタピラー」に関する無根拠な風聞
▼2月23日(火)
いっそ「ログ」ってことにしたらどうよ
▼2月24日(水)
「キャタピラー」に「ユルス」はあるか
▼2月25日(木)
ベルリン発「キャタピラー」感想ブログ
▼2月26日(金)
風天こと渥美清の句に詠まれていた乱歩
▼2月28日(日)
みんなもう競うようにして星になってる
▼1月1日(金)
ごく月並みですがおめでとうございます
▼1月2日(土)
新年二日目は当然二日酔いでござるの巻
▼1月3日(日)
新年三日目はほぼ死にそうになる新年会
▼1月4日(月)
新年四日目は悄然として日常生活に戻る
▼1月6日(水)
新年も六日目なれどまだへろへろである
▼1月7日(木)
寒い寒いとちぢこまってるうちに七草粥
▼1月9日(土)
鬼のごとき本棚をお子供衆が攀じ登るよ
▼1月10日(日)
大好評のはずのウェブ版講座ついに再開
▼1月12日(火)
ここで「新青年」終末期を概観しておく
▼1月15日(金)
寒かったり真っ青になったり寒かったり
▼1月16日(土)
かくもあったであろうと思わしめる歩み
▼1月18日(月)
ふしぎな橋を渡ってしまった人をしのぶ
▼1月22日(金)
なんだか無性に春が待ち遠しい気がする
▼1月25日(月)
北森鴻さんのご冥福をお祈りいたします
「キャタピラー」原作問題をめぐる見解
2010年3月1日(月)

 早いものでもう3月です。2月の煩悶にはけりをつけることにして、若松孝二監督作品「キャタピラー」、つまりこれなわけですが──

 乱歩原作というクレジットがないにもかかわらず「RAMPO Up-To-Date」に記載いたしました。ネット上をざっと眺めてみましたところ、「キャタピラー」と「芋虫」の関係性を語るに際してオマージュだのリスペクトだのといった言葉をつかっている人、あるいはやっぱ乱歩が原作だったんだなと単純無邪気に納得している人、その他いろんな人がいろんなことを書き記していらっしゃいますけれど、私の見解にはその後まったく変化がなく、「キャタピラー」製作者サイドは「芋虫」原作者サイドに原作料を支払うのが筋ってもんじゃね? ということに尽きております。もっともこれだってネット上の無根拠な風聞にもとづいた見解にすぎず、無責任といえばじつに無責任な話だなとは思いますが、いずれにしても「キャタピラー」は乱歩に無縁な映画ではないと判断いたしました。

 ちなみに現時点においてもなお、この問題に関して日本文藝家協会が動いたとか名張市が動いたとか、そういった話はいっさい伝わってきておりません。こうなりますともういっそ、若松プロダクションから名張市役所に電話かメールでご連絡をいただいたほうが手っ取り早いかもしれません。何が手っ取り早いのかはもうひとつ判然としませんが、名張市は人のふんどしで相撲を取ることを得意としておりますし、しかもゆすりたかりには結構弱いみたいでもありますから、お話をいただければなんとかお役に立てるのではないかと愚考いたします。名張市にもたまには、われに撃つ用意あり、とばかりに見得を切ってもらいたいものだと市民のひとりとして思ったりもする次第ではあるのですが、映画「キャタピラー」をめぐる話題はとりあえずここまでといたします。



週刊誌八冊を購入して気になるお値段は
2010年3月2日(火)

 映画「キャタピラー」の話題にはきのうでけりをつけたつもりでいたのですが、掲示板「人外境だより」に大江十二階さんから「キャタピラー」関連の雑誌記事に関するお知らせをいただきましたので、予定を変更してきょうもひきつづき「キャタピラー」の話題です。

 近くの本屋さんで雑誌八冊、しっかり買い求めてまいりました。いずれにも「キャタピラー」の寺島しのぶさんがベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を獲得したという記事が掲載されています。誌名を列記すれば次のごとし。

・週刊新潮 3月4日号 340円
・AERA 3月8日号 380円
・女性セブン 3月11日号 360円
・週刊ポスト 3月12日号 350円
・FRIDAY 3月12日号 370円
・週刊現代 3月13日号 390円
・女性自身 3月16日号 360円
・FLASH 3月16日号 380円

 いくら週刊誌でも八冊まとめて購入すれば気になるお値段は三千円ほどになるわけで、支払いをしながらなんかもう馬鹿みたいな話だなと思いました。とくに女性週刊誌のコーナーで血まなこになって女性セブンとかのページをくってるおれって何? という気恥ずかしいような根源的疑問を拭い去ることができなかったわけですが、そんなことはともかくとしてこれら八誌の「キャタピラー」関連記事には乱歩の名前が出てきているのか。たーっと走り読みしてみましたところ、わずか三誌に乱歩の名が見えました。

 まずは週刊ポスト。堂々三ページにわたる「寺島しのぶが問いかける『夫婦の性と愛』情念シーン」には、大江十二階さんからもお知らせいただいたとおり、乱歩の名前がこんな感じで登場していました。

 この作品は、江戸川乱歩の小説『芋虫』と、71年の米映画『ジョニーは戦場へ行った』を下敷きにした若松監督のオリジナル作品である。

 つづいてはFRIDAY。「News Scope」という雑報ページに四分の一のスペースで「寺島しのぶが『もんぺ姿』で掴んだ栄冠」なる記事があり、そこにはこんなことが。

 受賞作の『キャタピラー』は、江戸川乱歩の小説『芋虫』が原作。

 最後は週刊現代。「LOOK」というコーナーの雑報で、ページの五分の三くらいのスペースを占めている「『濡れ場』を拒まない本物の女優・寺島しのぶ」には──

 若松孝二監督の『キャタピラー』は、江戸川乱歩の小説『芋虫』が原作、日本ではまだ公開前の作品だ。

 以上です。わずかに以上です。いずれ「RAMPO Up-To-Date」に貼雑した記事をご覧いただけるはずですが、しかしなあ、こんなことなら必死になって女性自身とか買ってくる必要はなかったわけです。えらく血迷ってしまいました。こうなったら仕方ありません。FLASHに載ってる安めぐみちゃんの「攻撃的[胸の谷間]SEXY」とかFRIDAYで袋綴じになってる青島あきなちゃんの「大胆ヌーディー !!」とか週刊現代の「4人のミスユニバース日本代表」とか「叶姉妹撮影現場より」とかでとにかく元は取らなきゃなとは思うのですが、叶姉妹はまあいいか。



「キャタピラー」英文レビュー意味不明
2010年3月3日(水)

 まだ「キャタピラー」の話題です。レビューが見つかりました。ただし英文です。私にはもう何が何やらさっぱりで、褒められてるんだか貶されてるんだかそれすら判然としないありさまなのですが、乱歩の名前はどこにも出てこないということだけはわかりました。

 Variety:Caterpillar(2月15日)

 ではまたあした。



「キャタピラー」の話題をもうちょいと
2010年3月6日(土)

 やっぱもうちょい若松孝二監督の「キャタピラー」で行くことにして、そもそもはこれだったわけです。

 2月21日午後7時41分に呟かれたこのツイートによって「キャタピラー」原作問題に関するもしかしたらそんなようなことなんじゃねーの? みたいな私の疑問は氷解し、まさにそんなようなことだったのかと納得されたわけなのですが、このツイートに書かれているのはあくまでも噂です。噂にもとづき、また去年からネット上で報じられていたあれこれにももとづいて推測するならば、若松さんは乱歩の「芋虫」を映画化する作業を進めていた。脚本の第二稿目に入った時点でも、まだ「芋虫」が原作であると表明していた。しかしその後、原作料の交渉が不調に終わったため、「キャタピラー」と改題して乱歩原作ではないということにしてしまい、最近の取材なんかでは「キャタピラー」は「芋虫」などに触発された映画であると主張している。まあそういったところであろうなと考えているところへ親戚の幼児ふたりが乱入してまいりましたので、つづきはまたあしたということにいたします。



乱歩は「キャタピラー」をどう眺めるか
2010年3月7日(日)

 予期せぬ幼児の乱入によって中断されてしまいましたが、きのうのつづきです。いくらタイトルを「キャタピラー」に変更したからといって、映画そのものは「芋虫」にもとづいているわけですから、というか映画を観てみないことにはほんとのところはよくわからないのですが、YouTube に掲載されている関連動画から判断するかぎり「キャタピラー」はまんま「芋虫」であるというしかなさそうです。

 であるというのに、たかが原作料をめぐるいざこざから若松孝二監督は「芋虫」は原作ではないと強弁するに至った。ネット上の噂からはそのように判断されます。私としてはちゃんと原作料を支払っていただいて、「監督 若松孝二」「原作 江戸川乱歩」というクレジットが「キャタピラー」のエンドロールで両雄並び立ってるところを見てみたいものだと本気で思いますけど、実際には原作問題はこのままの状態で推移し、8月にはめでたく「キャタピラー」の公開を迎えるということになるのでしょう。

 では、天国の乱歩はこの問題をどう眺めているのか。この手の問題になると、もしかしたら乱歩はあんまりきついことはいわないのかもしれません。オリジナリティなどという痩せ細ったような近代的概念に、乱歩はたいして重きを置いていなかったと考えられるからです。ただしお金の話は別でしょう。乱歩は文人として、つまり文章を商いすることをなりわいとしている人間として、そのなりわいにおけるお金のやりとりには結構シビアな人だったはずですから、天国の乱歩はいまごろどんな気持でいることやらと思われてならないのですが、しかし他人の懐の問題に深入りするのも品のない話です。きょうはここまでとしておきましょう。



名張市が誇る豪華乱歩イベントへどうぞ
2010年3月11日(木)

 雑用が立て込んでご無沙汰気味になっておりますが、当地も寒くて春は名のみの風の寒さよ。そんな名張市が全国の乱歩ファンのみなさんにお贈りする豪華イベント、既報分も含めてお知らせ申しあげます。

 名張市公式サイト:「なぞがたりなばり」に来てだあこ!
 毎日jp:乱歩の世界:黒テントで紙芝居や朗読 愛好家が21日−−名張・生誕地碑広場 /三重

 ではまたそのうち。



富山市ではこんなイベントがあるようで
2010年3月12日(金)

 本日も短くお知らせのみ。といったってあしたの催しをきょうお知らせするわけですから、ものの役には立ちゃしません。

 富山市八尾町上新町の坂のまち美術館であす13日、「押絵と旅する男」の朗読があるようです。

 坂のまち美術館:Home

 とはいうものの、この公式サイトではあしたの催しが告知されていないというていたらく。富山でよかったなあ坂のまち美術館、これが名張市内にある施設だったらいいだけ叱り飛ばされてるところだぞ。しかしウェブニュースにはこのとおり。

 北國・富山新聞ホームページ:富山市八尾町で通年型観光を 4月、坂のまち美術館が「まちの駅」に認定(3月9日)

 ざーっと検索してみたらブログがひとつひっかかってきて、3月13日午後5時開場、5時30分開演、「風の盆」踊り観賞のあと6時から蔭山武人さんのライブ朗読「押絵と旅する男」、みたいな日程で、なんか食事もあるみたいです。

 商工オフィス:春風の盆(1月29日)

 あんまりよくわかりませんけど、とりあえずお知らせいたしました。



文芸誌〈アピエ〉最新号は乱歩特集です
2010年3月13日(土)

 きょうも短いお知らせなれど、乱歩ファンのみなさんには必ずやお喜びいただけるものと自信をもってお知らせいたします。

 京都で発行されている文芸誌「APIED〈アピエ〉」の第十六号が出ました。テーマはずばり「江戸川乱歩」。22センチ×13センチ、84ページ。縦長の瀟洒な誌面には年配者の眩暈を誘うほど細かいフォントで乱歩をめぐる文章がみっしり、有無をいわさぬ充実ぶりです。

 APIED:APIED 文芸誌

 公式サイトにはいまだ最新号の情報が掲載されていないようですので、とりあえず目次を写しておきましょう。

三神恵爾
 怯えと郷愁 ─乱歩と今ひとつの世界─

成瀬義明
 乱歩こわい ─僕の江戸川乱歩ベストテン─

寺田 操
 屋根裏の散歩者・貼雑帖

松本完治
 よるの夢こそまこと 郷愁の乱歩

菅野水紀
 模像

山本善行
 ジャズ喫茶で江戸川乱歩に出会った

谷口 基
 十二階と双眼鏡 ─反近代の怪談「押絵と旅する男」─

金城静穂
 押絵のお七

田村 都
 化人と幻戯と

一之田吉
 シーズチェアー

金城京香
 小林少年の勝利

浦谷一弘
 江戸川乱歩の「美女シリーズ」の〈女性〉像

黒田大河
 陰獣の想像力

吉川麻里
 『孤島の鬼』と二つの手記

竹川ナフォカッチャ
 乱歩ノススメ

藤井祐介
 木々高太郎と江戸川乱歩

池田浩士
 『幽霊塔』論・序説

近代ナリコ
 近代ナリコの寝床で読書 3
 ときにはハッピーエンドも

 ラインナップをご覧になっただけで胸がわくわくしていらっしゃるものと拝察いたしますが、気になるお値段は本体わずか六百円。入手方法は公式サイトの「購入申し込み&取扱書店一覧」でどうぞ。



このところややばたばたしておりまして
2010年3月16日(火)

 富山はこんなあんばいだったようです。

 北國・富山新聞ホームページ:おわらと朗読、八尾楽しむ 坂のまち美術館で春風の盆(3月14日)

 こんなのもありました。

 映画ジャッジ:通映画批評 > キャタピラー(3月15日)

 積もる話はまたそのうちに。



ミステリ講演会は春の嵐とともに去りぬ
2010年3月23日(火)

 春の嵐が吹き荒れた3月21日春分の日、名張市名物ミステリ講演会「なぞがたりなばり」が催されました。

 名張市公式サイト:「なぞがたりなばり」に来てだあこ!

 今野敏さんが「謎の魅力」と題してお話しになり、もっとも面白かったのは唐手の型の謎解きで、といったってなんのことだかさっぱりおわかりにはならないでしょうが、ミステリファンのハートを鷲掴みにする名推理だと思われました。

 同じ日、こんなご町内イベントも開催されました。

 中日新聞 CHUNICHI Web:20面相潜む黒テント出現 名張で「乱歩」イベント(3月22日)
 毎日jp:乱歩蔵びらきの会:乱歩の世界楽しむ 愛好家、紙芝居や映画上映−−名張/三重(3月22日)

 遠路はるばる泊まりがけでお運びいただいたみなさんにお礼を申しあげます。私はきのう一日じゅう二日酔いで参っておりました。



いとうさんと奥泉さんが乱歩で文芸漫談
2010年3月24日(水)

 名古屋方面のみなさんにお知らせです。4月4日の日曜日、いとうせいこうさんと奥泉光さんによる「文芸漫談 in 名古屋」が催されます。会場は愛知県産業労働センター、開演は午後2時30分、料金は千八百円、お題は乱歩の「人間椅子」。

 BOOKMARK NAGOYA:文芸漫談in名古屋 いとうせいこう × 奥泉光(2月11日)

 4月にスタートするテレビドラマ「三代目明智小五郎」の予告動画がMBSの公式サイトに掲載されました。

 3月21日に当地で催されたミステリ講演会の写真はブログに掲載いたしました。

 名張まちなかブログ:乱歩のことを考える(と)(3月24日)

 ではまたあした。



きょうもきょうとて手抜きでござるの巻
2010年3月25日(木)

 名張市名物ミステリ講演会の話題はこちらになっております。

 名張まちなかブログ:乱歩のことを考える(ち)(3月25日)

 ではまたあした。



こんなヴィジュアルがひっかかってきた
2010年3月27日(土)

 検索してたらこんなウェブニュースがひっかかってきました。毛皮のマリーと来れば寺山修司ではあるのですが、「かねてから寺山修司や江戸川乱歩などの文学的な影響と、デビッド・ボウイ、T. Rex などのグラムロックからの影響を公言してきた毛皮のマリーズのフロントマン・志麿遼平の強いこだわりに信藤氏が熱く共鳴し、細部のディティールまで徹底的にこだわり抜いたこの最新ヴィジュアルが完成した」とのことです。

 LISMO(Music):毛皮のマリーズ、麗しい新ヴィジュアルを公開(3月25日)

 なんかいつまでも寒くて困ります。