【 目次 】
[序章] 大正十四年夏 |
[第一章] 怪人の創造 |
[第二章] お化けの賑わう夜 |
[第三章] 乱歩変幻 |
[第四章] 鏡のなかの肉叢 |
[第五章] 獏鍋の宴 |
[第六章] 公開殺人への誘い |
[第七章] 夢幻展覧会 |
[終章] 昭和二十年三月十七日 |
【 番犬敬白 】1999年10月21日
懷しの亂歩! 懷しの『赤い部屋』!
我々は再び昔日の江戸川亂歩氏に見〔まみ〕える事が出來るのです。
名張人外境掲載する所の妹尾俊之氏『夢都傅説 むとでんせつ』一篇四百三十枚が即ちそれであります。『蜘蛛男』『黄金假面』『盲獸』時代の江戸川亂歩氏が、再び、そしてあの當時よりは、更に奇怪なる姿を以つて我々の前に出現いたしました。あの細密な奇想、微妙な幻戲──、それ等に人外の、あの何かしら惨憺たる哀調の衣を着せた江戸川亂歩氏が、かくも忽然として我々の前に現れたのです。これを月並みに言へば、阪神淡路大震災に遭遇した正にその時、怪人の跳梁する闇に想を練り、夢都神戸への鍾愛に筆を洗つて成つたもの、それが即ちこの『夢都傅説』一篇であります。ああ、獵奇耽異の徒の隨喜渇仰すべき近來の一大快事ではありませんか!
なお、『夢都傳説』は第三回日本ホラー小説大賞長編賞最終候補作でございます。