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裁判 その(1)裁判の争点  その(2)裁判は始まったものの  その(3)もう居直った! 当たって砕けろだ!
その(4)点が線に、線が面になる
 その(5)六箇条の実践 その(6)地元医師に意見書作成を依頼 
その(7)裁判所業を煮やし公の医療機関に鑑定を依頼
 その(8)裁判所と鑑定医が対立、被告弁護士も逆襲開始 
その(9)保険会社独自の意見書で反論
 その(10)判決か和解か、戦術の見直し その(11)和解、事実上の勝訴!

裁判  その(11)和解、事実上の勝訴!

「和解案その2」で決着

 和解の場合、原告・被告がそれぞれ交代で法廷に入り裁判官と話をします。最初に被告側が呼ばれ、続いて原告側が呼ばれました。この種の話し合いは二度行われ、平成12年4月3日、遂に最終の和解案が提示されました。出会い頭の事故で2割が過失相殺されましたが、ほぼ請求通りの賠償が認められました。

 障害等級は4級。介護の程度は「随時介護を要する」。労働能力は92%喪失。逸失利益計算の基礎として、年収は母が定年まで働けたら受け取っていたであろう額を勝ち取ることができました。

裁判を振り返って

 裁判官も、脳外傷に理解ある良い人に巡り会えたと思います。その他いろんな人達にお世話になりました。弁護士先生も良識ある善い人でした。この勝利はどれ一つが欠けても有り得なかったでしょう。

 裁判、それは一つのドラマ。しかしそれは決して筋書きの無いドラマではありません。筋書きは原告が書きます。原告の役割、それは舞台に例えれば主役でありディレクターでありシナリオライターであるということです。裁判官、弁護士、医師は脇役でしかありません。原告は告訴から勝訴に至るまでのシナリオを書き主役を務めながら出演者が最高の演技ができるようディレクターとして細心の神経を配らなければならないのです。加害者への憤りは大いにあります。しかし決して私情に流されてはなりません。あくまでクールに舞台を成功に導くのです。そして舞台が終わりカーテンが下りて初めて涙を流すのです。

 裁判のことや家族の不協和音のことなど、ストレスで季節を感じる余裕もありませんでしたが、ここで初めてみずみずしい若葉の萌芽が目に止まり、春が来ていることに気が付きました。お母さん、やったよ、裁判に勝ったんだよ!今まで産んで育ててもらった分うんと親孝行するからね。今日がその一歩だよ。

 ここでお世話になった方々に改めてお礼を申し上げます。

「有り難う御座いました」

脳外傷をめぐる問題は今年になってNHKのクローズアップ現代で取り上げられる等、次第に世間の関心を集めてきています。各医療機関の脳外傷に関する理解の格差も縮まってきているようです。私の母の頃とは違って、被害者の方々にとって随分有利になってきました。

 しかし、失った時間は戻りません。失った能力も現代の医学では取り戻すことは不可能です。母は相変わらずボーッと無気力な表情で一日を過ごしています。事故の後遺症が進行して、どんな二次障害が今後出て来ないとも限りません。今後医療技術が進んでこうした後遺症が治癒できる日が一日も早く来ることを祈っています。  

平成12年7月19日(水)