2006年7月下旬
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さてその松本清張記念館ですが、きのうの記述にまちがいがありましたので訂正しておきたいと思います。私は昨日、この記念館にかんして、 ──1998年の8月に開館し、これはうろおぼえの数字ですからあまり信を置かないようにしていただきたいのですが、総工費はたしか四十億円といわれていたのではなかったか。 とお知らせしたのですが、四十億円もかかってはおりません。二十五億円でした。よく考えてみたら私は1998年秋の北九州出張、市民に報告する意味もこめて漫才にしており、それを読み返してみたらちゃんと二十五億円と明記されているではありませんか。うっかり忘れておりました。どうもあいすみません。それにしても四十億という数字はどこから出てきたものでしょう。
この漫才に記したこと以外にも清張記念館スタッフの方からいろいろとお聞きしてまいりましたので、記憶に頼ってそれをお知らせしておきますならば、まず二十五億円もの予算の問題。計画決定したのはバブルがはじけてのちのことではあったものの、その後の不況がここまで(というのは1998年の時点のことですが)深刻になるとは予測できなかった時期のこととて、二十五億円かけて記念館を建設することにはどこからも異論は出なかった。 北九州市には清張が小倉に住んでいた当時に関係のあった方がたくさんお住まいで、年齢が年齢ですからいわゆる各界各層のトップとかそれに近いポジションについていらっしゃる。そうした人たちがまず諸手をあげて賛成し、ほかに地元の青年会議所あたりからも清張記念館をぜひ、という声が高まってきて、最終的には北九州市議会におきましても、清張はレフトウィングの熱烈な支持を集めた作家でありましたゆえ(すぐに破談になったとはいえ日本共産党と創価学会との手打ちをとりもった作家でもありましたし)、共産党議員も含めた全会一致で清張記念館の建設が認められたとのことでした。 そんなこんなで館内も見学し、さすがにすごい施設ではあったのですが、しかしこんなものをつくってしまったら管理運営がたいへんであろうな、入館者数の増減に神経質になり、展示などの企画に頭をひねり、そのいっぽうで清張の人と作品への持続的なアプローチをつづけ、なんていうのはじつにたいへんなことではないか、と私は思いました。考えてみれば前年の1月には当時の名張市長が乱歩記念館をつくるぞと公言し、しかし何の進展もありませんでしたからことなきを得てはいたのですけれど、やっぱ記念館の建設なんていうのは文字どおりの一大事業であるなということが実感された次第でした。 ひるがえって当節の名張市における乱歩記念館だか乱歩文学館だかのおはなしはといいますと、これはもう清張記念館とはくらべものにもなりません。まず内発的のものがどこにもありません。みごとなほどにありません。名張市に乱歩記念館が必要だという市民の声がどこかにあるのか。どこにもありません。そんなものは名張まちなか再生委員会の内部でこそこそと、それもルールや手続きや原理原則というものをことごとく無視した不当なやり方でこそこそとささやかれているだけなのである。そんな構想がかりに実現に移されたとしても、きのうも書いたことではあれど、 「清張記念館があんなに立派なのに乱歩記念館はどうしてこんなにしょぼいんですか。名張市は乱歩をばかにしてるんですか」 という外部からの声が聞こえてくるのは眼に見えていると私は思う。 ここで眼を転じることにして、近年話題の記念館といえば鳥取県境港市の水木しげる記念館が想起されます。これは新たに建設した施設ではなく、長く営業していた料亭をリフォームして記念館に再利用したものなのですが、それでも四億八千万円の事業費がかけられています。この数字はたしかなものです。今年4月に実業之日本社から出た五十嵐佳子さんの『妖怪の町』(監修は水木しげるさん)にそのように記されているのですからまちがいありません。 この本によると水木しげるさんの生まれ故郷である境港市で1992年、住民の提唱によって妖怪のブロンズ像がつくられました。翌年にも像の設置がつづけられ、ブロンズ像のならぶ通りは「水木しげるロード」と名づけられました。1996年にはブロンズ像が八十体となり、翌97年には水木しげるロードが年間四十六万八千人の観光客を集めるにいたったそうです。 水木しげる記念館は1998年の完成をめざし、六億六千万円をかけて鉄筋コンクリート三階建ての施設をつくることが構想されたのですが、市議会で反対されて計画は中断。しかし水木しげるロードはコンスタントに年間四十六万人を集めつづけ、2000年には地元民間企業が水木しげるロードの中心に妖怪神社を建立。おかげでその年の観光客は六十一万人に達しました。さあどうする。 境港市は市の単独事業による水木しげる記念館の建設を断念し、国の地域総合整備事業の助成を受けることに決定。新築ではなく料亭を改築することで予算規模を縮小し、乾坤一擲の計画を市議会に提案したのでしたが、しかし賛否両論が噴出して喧々囂々侃々諤々。それでもなんとか議会の承認を得て、記念館がオープンしたのは2003年3月のことであったといいます。 それで昨年一年間、角川映画「妖怪大戦争」の影響もあったのか、水木しげる記念館や水木しげるロードを訪れた人の数は過去最高の八十五万五千人を記録したそうな。 水木しげる記念館のオフィシャルサイトをどうぞ。 松本清張記念館にしても水木しげる記念館にしても、名張市の乱歩記念館構想とは全然もう根本的にちがっておるではないかという気がします。大丈夫なのか名張まちなか再生委員会。ひとごとながらお案じ申す。 お名前が出てまいりましたのでひとことご案内。本年10月28日に名張市内で催される綾辻行人さんの講演会のお知らせが名張市のオフィシャルサイトで告知されております。よろしくどうぞ。 |
松本清張記念館が二十五億円、水木しげる記念館が四億八千万円、みたいなおはなしをしていると、問題はお金じゃないとおっしゃる方が出てくるかもしれません。よくぞ申した。その言やよし。しかしそんなせりふは、まちがっても名張まちなか再生委員会のみなさんには口にできないものでしょう。お金はあまりかけられないが、名張市民が胸を張って誇れるような乱歩記念館だか乱歩文学館だかをつくってみせます、などという啖呵はあの委員会のみなさんには死んだって切れないはずである。 いやいや、こんなふうに断言してしまうのはまずいかもしれません。なにしろあの委員会ときたら初瀬ものがたり交流館にせよ乱歩記念館にせよ、自分たちの考えていることを何ひとつ明らかにしようとしないんですから、事態としてはいよいよ「生誕三六〇年芭蕉さんがゆく秘蔵のくに伊賀の蔵びらき」状態。地域住民にはいっさい情報を開示せず、住民の税金を自分のお金だと勘違いしたままで、こっそりこそこそことを運んでしまう魂胆なのかな。 しかしそうもまいらぬのではないか。たとえば私が名張まちなか再生プランの欺瞞性を指摘し、名張まちなか再生委員会にプランのことで申し入れを行い、しかし委員会はまったく聞き入れようとせず、みたいなことはこの名張人外境でずーっとずーっと一年以上も報告しつづけているわけですから、むろんごくごく少数にとどまるものではありますが、名張市民にも乱歩ファンにもプランがインチキであるという認識は着実にひろまりつつあるのではないか。ていうか、すっかりひろまってしまっているのではないかいな。 インターネットというのはなかなかに恐ろしいもので、新聞であれば地方版に載るだけの記事でもひとたびネット上に掲載されれば読者の数は一挙にふくれあがる。たとえば私がほぼ毎朝チェックしている2ちゃんねるのニュース速報+板にはきのうの午後にこんなスレッドが立てられていて、この板でわれらが伊賀地域のことが話題になるのは昨年11月、名張市が住民投票条例案を明らかにしたとき以来のことではないかと思われるのですが、旧上野市選出の議員先生がいいように叩かれてます。 旧上野市選出の三重県議会議員の先生が津市内の飲食店で暴力沙汰におよんだと訴えられ、ご本人は事実関係を否定したもののあっさり逮捕されてしまったという一件。このスレッドのソースは毎日新聞三重版で、つまり全国紙の紙面を通じてであればおおむね三重県民にしか知られることがなかったはずのニュースなのですが、インターネットとなればそうは行きません。げんにこの先生、2ちゃんねるにさらされてこんなことになってるわけですから。 それで結局のところ私が何をいってるのかといいますと、もう無理だろうということです。乱歩記念館だか乱歩文学館だか、そんなものはできないであろうということです。伊賀地域を代表する知性であり名張市でもっとも乱歩のことをよく知っている人間がここまで構想を否定し、見解をおおっぴらにしているわけなんですから、名張まちなか再生委員会にも私のいってること、煎じつめていってしまえばこんな構想はうわっつらの思いつきにすぎないということはそろそろ自覚されてきているのではないか、しかし彼らには何をどうすることもできなくて、要するにもうお手あげの状態なのではないかということです。 しかし名張まちなか再生委員会には、それを認めることも公表することもできないのであろうと推測されます。よろしい。それならば私が息の根をとめてさしあげましょうか。私は名張まちなか再生プランにも名張まちなか再生委員会にもいまやいっさい関わりがなく、こちらから何かを働きかけることもなければ委員会側からの依頼要請に応じることもないわけなのですが、こんな構想は早い段階で叩きつぶしてやるのが親心というものかもしれないなという気がしてきました。私は誰の親なのか。 ですから名張まちなか再生委員会のみなさんはですね、何から何まで秘匿隠蔽していないで、税金を無駄づかいするなら無駄づかいするでおまえらがいったいどんな頭の悪いことを考えているのか、その構想をくわしく公開してみろというのだ。おまえら秘密結社か。
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いやおそろしい。インターネットは恐ろしい。 2ちゃんねるにおきましてはきのうお知らせした上掲のスレッド以外にも、旧上野市選出の三重県議会議員の先生が津市内の飲食店で暴力沙汰におよんだとして逮捕されてしまった一件のスレッド、こんなふうな感じで増えております。 うーん。面白い。いや面白がってちゃいけませんけど、地域社会の一員としては伊賀地域に関係のあることが大々的にとりあげられるのはなんとなく嬉しいことのような気がします。議員先生の関係者は嬉しくなんか全然ないでしょうけれど、議員先生のいわゆるアンチは大喜びしていらっしゃることでしょう。たとえば2ちゃんねるにおける三重県職員の憩いのオアシスにおきましては── 案の定「祝・逮捕!」みたいなことのようです。しかし議員先生に何の関係もない地域住民だって、三重県ってのはまったく、ですとか、これだから伊賀の人間は、ですとか、困惑したり憤慨したりしながらもなんとなく嬉しい気がしないでもないのではないか。それが一般的な感情ってやつではないかと私には思われるのですが、伊賀地域にお住まいの読者諸兄姉におかれましてはいかがなものでしょうか。 ひるがえって名張市における乱歩というやつも、たぶん似たようなものなのではないかしら。つまりみんな乱歩には無関係、ろくに作品を読んだこともないのではあるけれど、しかし乱歩という著名な作家がらみで名張市のことがとりあげられれぱ嬉しい気がするから、それなら乱歩記念館とか乱歩文学館とか、そんなものをつくれば名張市を売り出すこともできるのではないか、そしたらみんなで喜べるのではないか、みたいなことでしかないのではないかと私の眼には映るわけです。むろんくだんの先生は逮捕というマイナス要因によって人の耳目を集めているのですけれど、プラスかマイナスかを無視してしまって単に地域社会が注目を集めるための素材であると考えるならば、地域住民にとっては乱歩も議員先生もどちらだっておなじであるといえるのではないかと思います。 しかしこれがインターネットの怖ろしさか、ネット上では名張市のそんな思惑なんかとうに見透かされてしまっているような気も私にはいたします。はっきりいって最近までそんなことはなかった。名張市立図書館が江戸川乱歩リファレンスブック全三巻(のちに一巻追加。現在鋭意編纂中)を刊行し、本来であれば名張市のオフィシャルサイトでその三巻のデータを公開すべきところ、名張市にはお金がありませんでしたから私が個人的にサイトを開設してそれを公開し、みたいなことをやっていたあいだは、お、名張ってなかなかやるじゃん、みたいに思ってくださる人がなくはなかった。手前味噌のようなれど、私にはそのように感じられた。 しかしもういけません。名張市の化けの皮は完全にはがれてしまいました。決定的だったのはやっぱこれでしょう。 なかんずく怪人19面相という名のばかによるこのひとこと。 ──そもそも江戸川乱歩みたいなものどうでもええねん。20面相のキャラで又スフインクスのナンチャッテ写真で公益活動を実践しているのだから貴様につべこべ言われる筋合いとちがうねん! これが決定的でした。なんという決定力。サッカーW杯日本代表チームにわけてあげたかったほどの圧倒的な決定力なのですが、これだけで驚いていてはいけません。名張市自慢のツートップ攻撃をごらんあれ。 ──現段階では乱歩に関して外部の人間の話を聴く考えはない。 名張まちなか再生委員会によるこのひとこともまた決定的でした。これで終わりました。名張市は終わりました。うすらばかどもは何の考えもなく、何の考えもないがゆえの正直さでもって自分たちの内面をあきらかにしてしまいました。自分たちにとって乱歩なんてじつはどうだっていいんだということを吐露してしまいました。 ですから私には、 ──名張市に乱歩記念館をつくろう。 という名張まちなか再生委員会の言葉は、 ──そもそも江戸川乱歩みたいなものどうでもええねん。20面相のキャラで又スフインクスのナンチャッテ写真で公益活動を実践しているのだから貴様につべこべ言われる筋合いとちがうねん! ──現段階では乱歩に関して外部の人間の話を聴く考えはない。 という言葉によって裏打ちされているように聞こえてしまう。のみならず、名張市という自治体の本音がこれなのであるとさえ私には思われる。いやいや、げんにそうなのであった。私が直接知るかぎりでもここ十年あまり、名張市は乱歩にかんしてずーっとそうであったのである。そうではないと否定することは、名張市にも名張まちなか再生委員会にもとてものことにできぬと思う。 ばーか。そんな魂胆しかない連中に何ができるか。記念館だか文学館だか知らんけれど、そんな構想はとっととシュレッダーにかけてしまえと私は思っているのであり、おまえらとはもう縁もゆかりもないおれではあるが、これが武士の情けというやつさ、おまえらの手ではどうにも収拾がつかなくなったインチキプラン、おれが悪者とか嫌われ者とか憎まれ者とかになってきれいに水に流してやろうといっておるのだ。おまえらがプランを公開すればおれがいいように引導を渡してやろうといっておるのだ。こんなありがたい話はないではないか。 なんてこといってみても蛙のつらに小便か。いつまでもげろげろいってろ蛙ども。
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例の先生におかれましてはあいかわらずたいへんみたいです。2ちゃんねるにおきましては新しく7月23日付朝日新聞名古屋本社版30面というソースが紹介され、それによりますと津市内の飲食店(しゃぶしゃぶの木曽路という店であると2ちゃんねる的には確定されております)で暴行を働いたとして逮捕された旧上野市選出の三重県議会議員の先生は、まず二十代の女性店員を怒鳴りつけて泣かせたあと六十歳の女性店長に暴行を加え、そのあとたらふく飲み食いしたあげく、 「請求書を後で事務所に送れ。払うか払わんか、わからんがな」 と名刺を渡して店を出たそうです。逮捕された21日の時点では、飲食代はまだ支払われておらなんだそうな。なんじゃこいつは。 しかもご丁寧なことにその議員先生様ご一行は先生の「友人の男性1人と外国人女性2人の計4人」であったとのことで、こんな事実を知らされると大衆的想像力というやつにはとめどがなくなります。 そうかそうか先生は店の女の子を泣かせ女性店長に怪我を負わせたあと店内にどっかと陣取ってしゃぶしゃぶを注文しほらどんどん食えおまえも食えほら遠慮するなおれのおごりだとかいいながら同席したふたりの外国人女性にもたっぷりしゃぶしゃぶを食わせたあげく店には名刺一枚渡しただけで天下堂々無銭飲食そのあとはたぶんどこかのラブホテルにしけこんだのだろうなそう考えるのがいちばん自然だろうなそれで外国人女性とぱほぱほやりまくったのかあっもしかしたら3Pかくっそーこの先生はしゃぶしゃぶたらふく食って外国人女性にもしゃぶしゃぶ食わせてそのあと別のものをしゃぶらせてやりまくりかよしかし大丈夫であったのかこの外国人女性はもしかしたらおまえは締まりが悪かったから金なんか払ってやらん金がほしかったらあとで事務所に請求書を送れただし払うか払わんかわからんがながははははははははとかいいながら外国人女性のまたぐらに名刺一枚ぺたんと貼りつけて帰ってきたのではないのかこの先生。 この一件をめぐる大衆的想像力は嫉妬を基本的駆動力のひとつとしてだいたいそんなような方向に流れてゆくのではないでしょうか。私はそんなことまったく考えてはいないのですけれど、大衆的想像力の意識の流れを推測してみるにどうもそんなようなことではないのかという気がします。それともうひとつ、この先生はまったくひどい男だがこんな県議会議員を選挙で当選させた三重県民もばかなら議長に選んだ三重県議会もばかであろう、三重県って最低、みたいなあたりにも2ちゃんねるにおける大衆的想像力は当然およんでしまうことでしょう。 ここで私は声を大にして申しあげたい。この先生は伊賀地域から選出された三重県議会議員ではいらっしゃいますが、名張市は全然関係ありません。選挙区がちがっております。名張市はこの先生が選出された選挙区には含まれておりません。その点ご承知おきいただければ幸甚に存じます。
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しつこい。それにしてもしつこい。いつまでも降りつづく雨のようにしつこい。当節はニュースの賞味期間というものがおっそろしく短くなっていて、人の噂も七十五日なんてのはとっくに過去の話、この話題もじきに忘れられてしまうだろうとは思うのですけれど、旧上野市選出の三重県議会議員の先生が逮捕されたという一件で2ちゃんねるにはきのうになってまた新しいスレッドが。 この議員先生はたしか一貫して容疑を否定していらっしゃるはずなのですが、だというのに県議会からも県民からもすでに見切った見限ったみたいな扱いを受けていらっしゃるように見受けられるのはどうしたことか。やはり日ごろの行い心がけがよろしくない先生の場合には、一朝ことあらばここを先途と水に落ちた犬のごとく打たれ叩かれぼこぼこにされるということなのでしょうか。茶から出たわび、身から出たさび、いかんともしがたいところなのかもしれません。 いっぽう私も結構しつこかったわけですが、ご町内感覚となあなあ体質まるだしで進んでいるんだかそれとも座礁してしまったのか、一般市民には何も知らされていない名張まちなか再生プランの件、とにかくこのプランは何から何までインチキなのであるということを、とくに名張市民のみなさんにはよくご認識いただきたいと思います。ご認識いただいたところで歯止めをかける手だてはないようなのですが。 プランがインチキであるゆえんはさんざっぱら説いてまいりましたからここにはくり返しませんけれど、どうしてこんなインチキがまかり通ったのかというならば話は簡単、もともと相当にできのおよろしくない関係各位のみなさんがご町内感覚となあなあ体質で凝りかたまっているからなのであるというしかありません。ほんとにもう何いったってだめなの。蛙のつらに小便なの。 それでは蛙のみなさんにひとこと。名張まちなか再生プランに対する批判と対案は、わが渾身のパブリックコメント「僕のパブリックコメント」に記してありますから、読めったって読みもしないのだろうし、読んだところでそこに盛りこまれた理念やビジョンなんて理解できないのであろうけれど、ていうか蛙さんたちには理念やビジョンは邪魔なのであろうけれど、まあ読んでごらんと申しあげておきましょう。読み書きくらいはできるのであろうが。 ここでつらつらふり返ってみますに、このパブリックコメントこそは名張市にとって最後のチャンスでした。名張市が乱歩にかんしてまともなことをやるための最後のチャンスであった。しかしもう手遅れである。残念な話である。ご町内感覚となあなあ体質で乱歩記念館だか乱歩文学館だか、そんなものつくったって地域社会のお荷物になるしかないのだということを深く深く思い知るべきところなのであるが、蛙さんたちにはそんなことすらわからんのであろう。不愍な話である。 いや、最後のチャンスはそのあとにもう一度あったか。私が名張まちなか再生委員会の事務局を最後に訪れたときのことであった。ろくに乱歩作品を読んだこともないうすらばかに文学館だか記念館だかそんな愚劣なことを考えさせる以前に、名張市はいったい乱歩をどうしたいのか、それを明らかにすべきなのである、そのためには庁舎内に乱歩にかんする部局横断的なネットワークをつくることが必要である、乱歩にかんする知識と知恵ならおれがいくらでもつけてやるから、乱歩にかんしてまともなことをしたいと思うのであれば早急にそうしたネットワークをつくってみなさい、と進言したのが最後のチャンスであった。むろん何の音沙汰もないから、名張市役所のみなさんは、 ──現段階では乱歩に関して外部の人間の話を聴く考えはない。 みたいなことでいらっしゃるのか。とにかくもう終わった。最後のチャンスもあたら棒に振ってしまって、可能性の芽はことごとくつまれてしまった。関係者の無能力と怠慢のせいで完全に終わってしまったわけである。 しかしそれにしても、名張市というところは、あるいは、伊賀地域というところは、ていうか、三重県というところは、どうしてここまでひどいのかしら。名張まちなか再生プランなどという愚かしいプランのことはもうどうだっていいとしても、このあたりはほんとにどうしてこんなにひどいのか。
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いつまでもこんなことを面白がっておってはいかんではないか、とか、おれも何かあったときには官民双方四方八方からこんな感じでぼこぼこにされるのであろうな、とか、複雑な思いで見守っております旧上野市選出の三重県議会議員の先生が暴行の容疑で逮捕されたという一件、2ちゃんねるのスレッドはまだ生きております。 そしてきのうはこんな投稿が。
事情を知っている関係者が投稿したもののようですが、信を置くかどうかは閲覧者それぞれのメディアリテラシーにゆだねることにして、「相当泥酔していたらしい」というのが気にかかります。つまりこの先生、くだんのお店の店長に暴行を加えたことを一貫して否定していらっしゃったのですが、要するにべろんべろんの状態だったから自分が何をやったのか記憶していないということだったのでしょうか。そんな状態で外国人女性としゃぶしゃぶを食い、そのあとなおあんなことにも及んだというのか。 泥酔していたかどうかはともかくとして、先生がくだんのお店に入った時点でしらふではなかったことは事実であるらしく、伊勢新聞のオフィシャルサイトにはこんな記事が。
2ちゃんねるにおける三重県職員の憩いのオアシスはと見てみれば── 先生擁護派の姿はまったく見えません。あるのはたとえばこんな投稿。
「XXX」と伏せ字にされているのは「SEX」でしょうか「エッチ」でしょうか。それとも東京あたりでは四文字になってしまう例の言葉なのでしょうかまあいやらしい。大衆的想像力はもうぎんぎんです。 いっぽうこのスレッドはどうなのかと眼をやれば── 当然のことながらこんな声が。
7月24日付伝言で私は、 ──この先生はまったくひどい男だがこんな県議会議員を選挙で当選させた三重県民もばかなら議長に選んだ三重県議会もばかであろう、三重県って最低、みたいなあたりにも2ちゃんねるにおける大衆的想像力は当然およんでしまうことでしょう。 と案じたものでしたが、予想したとおりの展開になり、しかも「関西死ね」という罵詈雑言までが飛びかうにいたっております。三重県が関西地方に属するのか東海あるいは中部地方に属するのか、これはいささか難しい問題でありますから軽々に断ずるわけにはゆかないのですが、それにしてもこのあたりはどうしてこんなにひどいのか、とは私も思います。
お名前が出てまいりましたのでついでにお知らせしておきますと、7月19日付伝言において今月末に刊行されるとお知らせいたしました天城一さんの新刊、昨日頂戴したおたよりによりますと発刊が来月中旬にずれ込んだそうです。「相変らずの大冊」とのことですから、ファンのみなさんはどうぞお楽しみに。 |
どうも気になるあの先生。暴力行為を働いたかどでお縄になった旧上野市選出の三重県議会議員の先生は、とうとうこんなあんばいになってしまっていらっしゃるそうです。伊勢新聞の記事をどうぞ。
なんだか曖昧な書き方なれど、先生は「二十五日までに、津署の調べに容疑を認める供述を始めた」「二十四日になって容疑を認め始めた」とあります。いっぽう三重県議会はといいますと、朝日新聞によればこんなあんばい。
またずいぶんと早手回し。野呂昭彦知事と料亭で飲み食いされたあと別の店で外国人女性としゃぶしゃぶを賞味されたらしい先生がいまだ完全に罪をお認めになったわけでもない段階で、三重県議会の自民・無所属・公明議員団たらいう会派が先生の議員辞職勧告決議案を臨時議会に提出することを決定いたしました。ではその臨時議会たらいうのはどうなるのか。毎日新聞の記事をどうぞ。
なんか必死じゃん。外国人女性としゃぶしゃぶを賞味されたあとその外国人女性まで賞味してしまわれたのではないかと大衆的想像力の名のもとに邪推されまくっている先生を自分たちから切り離してしまうことに、いまや三重県議会の先生たちは一丸となって必死じゃん。それにしても橋川犂也さんたらおっしゃるこの県議先生はいったい何を考えておいでなのでしょう。「県民に説明責任を果たさないといけない」とはなにごとか。寝言は寝てからいうがよい。 などと書いても理解できぬばかもおろうから説明を加えておく。いくら必死になって臨時議会を開会してみたところで、いったい何が説明できるというのか。何もできまい。かの先生による暴行沙汰の現場にいあわせたというのであればともかく、知事だの県議だの何も知らない連中が雁首ならべて何が説明責任か。ただしただおひとり、野呂昭彦知事には説明できることがおありであろう。2ちゃんねる的にはしゃぶしゃぶの木曽路であったと確定されている店に足を運ぶまで、かの先生は別席で野呂知事と酒食をともにしていらっしゃった。すなわち7月25日付伊勢新聞の記事に「正副議長の新旧交代時に毎年、行われる恒例の会合」と記されていた懇親会にかんして、知事には何かしら県民に説明しなければならぬこともおありであろう。しかしそんなものはこの次の知事の定例会見で述べておけばいいことなのである。 だからわざわざ臨時議会を開いて説明しなければならぬことなど何もないのである。「政治倫理確立特別委員会の設置を目的に」などというのはその場のがれのおためごかしにしか聞こえぬ。手前どもは無関係ですと訴えたいのが三重県議会の本音であろう。しかしここまで本音を明らかにしてしまったら、三重県議会における「説明責任」なるものは保身のためのとりつくろいでしかないこともまた明らかになってしまう。だから寝言は寝てからいえというのだ。 それにしても情けない先生たちである。情けないうえに薄情である。上掲の毎日の記事には、 ──自無公側は「逮捕されたという事実は重い」として、田中容疑者が臨時会までに辞職の意向を示さない限り、起訴、不起訴にかかわらず、辞職勧告決議案を提出する構えで、他会派の対応が注目される。 とも記されているのであるが、かりにもついこのあいだまで一応のたてまえとしては三重県のためにともに尽力してきた同志ではないか。「臨時会までに辞職の意向を示さない限り、起訴、不起訴にかかわらず」などと罪を指摘された犯罪者みたいに焦りまくったこといってないで、当人が全面的に罪を認めてそのうえで職を辞することができる道だけは残しておいてやれ。先生たちは保身のために眼がくらんでいるのであろうけれど、それが武士の情けというものである。てめーらのうわっつらばっかとりつくろってんじゃねーぞばか。ばーか。 しかしこうなりますと百八十万三重県民のみなさん。われわれはなんともひどい先生たちを県議会議員として選んでしまったものだと思わざるをえません。きのうご紹介した2ちゃんねるの投稿のうち──
といったあたりには返す言葉もありゃしません。私はそのように思います。なれど──
などといわれねばならぬ筋合いはどこにもない。てやんでえべらぼうめ。三重県議会はたしかにクソであるけれど、それならぱ三重県以外の都道府県議会はクソではないと申すのか。そんなことはあるまい。目くそ鼻くそのたぐいではないか。 では最後に、お口直しということでもないのですが、フジテレビのウェブマガジンに掲載された新規ページをどうぞ。世田谷文学館で6月2日に催された「乱歩 夜の夢こそまこと」の紹介記事です。 しっかし面白いなあ三重県ってとこは。
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暑い、とはやはり思いますものの、今年の暑さは過去数年のそれにくらべればましなほうなのかもしれません。去年まで何年かは暑さのせいで完全に失念していた乱歩の命日、今年はちゃんとおぼえておりました。すなわち本日なり。 合掌。 乱歩が死去して四十一年目の夏なり。 きょうくらいは地上の俗事を忘れて静かな一日を過ごそうと思い、しかしあの先生のことが気にはなりますので2ちゃんねるのこのスレッドをちらっと閲覧してみたところ── あちゃー。きのうの午後になってこんな投稿が。
ふーむ。たしかにこの一件、衆人環視の状況で起きたとされる暴力沙汰を本人がわざわざ記者会見まで開いて全面否定したのがまず面妖、つまりいくらなんでもすぐばれることが明白なのであるからそこまでの大嘘がつけるものかどうか、しかし泥酔して記憶が飛んでいたのであればそれもありかとは考えられますものの、待ってましたといわんばかりの三重県議会の対応も含め、本人の日常的な行い心がけに問題があったらしいことは認めるとしても、いやいやそれだからこそというべきか、これは「裏がありそうな、不思議な事件である」とは私も思う。 しかし伊勢新聞のオフィシャルサイトにはきのうになってこんな記事が掲載されたのだし。
2ちゃんねるの投稿193番では「一緒に食いに行ったという人曰く、暴行など、全くしてないらしい」、ところが伊勢新聞では「田中容疑者と一緒に店を訪れた後援会関係者の男性」は先生の暴行を認めているという。はてさて奇妙奇天烈なり。 いやちがう。ちがうちがう。私があちゃーと思ったのはそんなことではないのである。問題は193番のひとつ前、192番のこれですがな。
あちゃー。これは要するに「名無しのオプ」名義で7月19日午後5時19分44秒に2ちゃんねる内のどこかの掲示板に投下された投稿が「オレオレ!オレだよ、名無しだよ!!」名義できのうの午後4時51分42秒、私が必ず閲覧するであろうとの想定のもとこの先生関係のスレッドに転載されたということなのでしょうけれど、あちゃー、まーだこんなことやってんのか。名張まちなか再生プランをぼこぼこに批判されたことがそれほど悔しいのか。それとももしかしたらプランが座礁してしまい、それでおれのことを逆恨みしてるのか。一度や二度ならいいけれど、ここまでしつこいとおれもなんだか不愍になるぞ。 いやまあ、二条河原落書をもどいてくれた努力は買ってやってもいいでしょう。怪人19面相にはとても真似のできない芸当です。しかし時期が悪かったかもしれない。なにしろ私はSRの会から頂戴したCD-ROM『SR Archives Vol.1』(詳細は「番犬情報」でどうぞ)で酷使官こと紀田順一郎さんの漢詩もどきに大笑いした直後なのであって、「乱歩呼び来ればパラパラと数枚」なんてのを読んだあとではいかな落書もどきもインパクトが弱くなってしまうのはいたしかたあるまい。残念であったな。だいたいがこの…… いやいや、乱歩の命日くらい、やはりおとなしくしていることにいたしましょう。つづきはあしたなり。合掌。
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気になる。どうも気になる。努力賞ものの落書もどきのお相手をつとめなければならぬところではありますけれど、気になってしかたないのは三重県議先生飲食店暴行事件のことです。どうしてこんなに気になるのかというと、私はたぶんあの先生に自分の似姿を見ているのでしょう。7月26日付伝言にも記しましたとおり、 ──おれも何かあったときには官民双方四方八方からこんな感じでぼこぼこにされるのであろうな、 という暗い予感が私にはある。私にはうしろ暗いところは何ひとつなく、自分が指摘するべきことを指摘し批判するべきものを批判しているだけの話なのであるが、ご町内感覚となあなあ体質に凝りかたまったみなさんには私などめざわり以外のなにものでもあるまい。ぼこぼこにされるならぼこぼこにされるでいいのだけれど、なすすべなくぼこぼこにされるというのも芸のない話である。 したがいましてここはひとつ、あの先生がぼこぼこにされてしまった一件を先行事例として精緻に分析しておけば、いざというとき何かの役に立ってくれるのではないかと私は考えました。ここいらあたりがやはり『江戸川乱歩年譜集成』を鋭意編纂中の身の職業柄といいますか、インターネット上で確認できるソースに基づいて一件を年譜ふうにまとめてみました。
先週の動きをまとめるだけでえらい手間でしたが、とにかく先生がいまだ罪を認めてもいない段階で急転直下の電光石火、事態の進展がじつにあわただしかったことがあらためて知られます。とくに先生の所属していた新政みえは、20日の時点で「本人から事情を聴くなど事実関係を確認したうえで対応する」としていたにもかかわらず、翌21日には先生の逮捕を受けて「こんなに急に進展するとは思っていなかった」としながらも「事実関係の確認」をすっ飛ばして「厳しい対応」を示唆している点、関係者にも想定外の進展ぶりであったことがうかがえます。どうしちゃったんだろ。 そんなこんなでひと息ついて、2ちゃんねるの例のスレッドには落書もどきの第二弾が投稿されているのかなと覗いてみましたところ── きのうの夜にこんな投稿が。
どこのどなたか存じませんが、あたたかいお言葉をいただいて不覚にも落涙しそうになりました。どうもありがとうございます。今後とも精一杯つとめたいと思います。 そうかと思うと──
自演じゃねーやばーか。 そうこうしておりますうちにこのあいだの日曜、7月23日に発行された名張市の広報紙「広報なばり」が名張まちなか再生プランの記事を掲載していることに気がつきました。タイトルは「名張のまちなか再生は進んでいるのか?」。このページです。 テキストだけなら名張市オフィシャルサイトのこのページでもお読みいただけます。 しかしこれではなんだかなあ。
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落書もどきも名張まちなか再生プランもあとまわしにして先生の話題をつづけます。これまでのところでよくわかったのは、ふだんの行い心がけがよろしくない人間は一朝ことが起こった場合に寄ってたかってぼこぼこにされてしまうということです。それはまったくひどいもので、いつもはへこへこしてろくに眼を合わそうともしなかったやつ(どっかの掲示板に人の悪口をいじいじ書きこむことしかできないようなやつ、といってもいいかな)までが鬼の首でも取ったように叩きはじめる。メディアの報道や電子掲示板の投稿でそのことがあらためてわかりました。 メディア自身にもそうした傾向をあおろうとする性質があるようで、たとえば7月25日付朝日新聞のこの記事などはその典型でしょう。 逮捕され送検されたというのに先生は7月分の議員報酬をまるごと受け取っている、という記事なわけなのですが、こんなあたりまえのことをわざわざ記事にしなければならぬ理由がどこにあったのか。おそらくは読者の庶民感情たらいう負け犬根性に媚びを売り、読者をして水に落ちた犬をさらに打たせるためでしかあるまい。もしかしたらこの記者の方、先生から何かいやな思いをさせられたことがあるのかもしれないなとも思いますけど。 そんなことはともかく、問題は先生のことです。私も一件のニュースに接した最初はばかで破廉恥な先生だなと思っただけでした。しかし事態が推移するにつけ、なんだか変だなと首をひねる感じになってきました。いまふり返ってもっとも変だと思われるのは、やはり7月21日に開かれた先生の記者会見。中日新聞ではこのように報道されておりました。 たとえばかではあるにしても、はたしてここまでばかなのか。そんな話がありなのか。かりにも県議会議員として四期目を迎え、最大会派の代表や議長まで経験した先生です。さすがにそれはないのではないかと、ちょっと疑わしい気がします。 たとえば私がこの先生であったとしてみましょう。私は7月2日、津市内の飲食店で女性店員だか女性店長だかに全治二週間のけがを負わせた。そのうえで同行者三人としゃぶしゃぶをぱくつき、名刺一枚渡しただけで一円のお金も支払わずに店をあとにした。しかしパトカーを呼ばれることもなく、翌日になって被害届が出されることもなかった。 店でのできごとなど忘れてしまっていた(全治二週間のけがもすっかり癒えたはずの、といってもいいのか)7月20日になって、私は驚いた。メディアの一部が私の暴力行為を報じている。津警察署から出頭要請も届いている。まずいことになったな、と私は思った。来年の春には改選が控えているのだ。ここで選挙民の心証を悪くしてしまうのはいかにもまずい。事件をもみ消すことができれば一番いいのだが、密室内でのことであればともかく、私は店員以外にいあわせたほかの客を怒鳴りつけてもいるのだから、すべてをもみ消してしまうのは無理な相談だろう。 よし。ここはひとつ潔く詫びを入れ、警察にもおとなしく出頭しよう。なに、たいした罪ではない。酒に酔って腹立ちまぎれに椅子を投げたら、それがたまたま店の人間に当たってしまっただけの話だ。ただの酒のうえの失敗だ。へたに隠しだてするより素直に謝ったほうが選挙民の心証もいいはずだ。また酒を飲んで駄々っ子のようなやんちゃをしでかしてしまったのか。いつもの話だ。地元民はなんとかそんなふうに理解してくれるはずである。まずいことにはちがいないが、こんなトラブルはせいぜいが全治二か月。来年の選挙のころには傷もすっかり癒えているさ。 私ならそう考えていたはずです。しかし先生はそうは考えなかった。わざわざ緊急会見を開き、上掲の中日新聞の記事によれば店員を怒鳴ったことは認めたものの、椅子を投げつけるなどの暴力沙汰にかんしては、 「つまようじ一本当たってないのに、けがするわけがない」 「いすやメニューは投げつけていない。まったくのうそと思う」 「どうけがをさせられたのか(被害者に)聞いてみたい」 「はめられたと思わないこともない」 「けんかを売られた気分」 などと全面否定した。 ばかなのかこの先生は。こんな大嘘、いくらなんでもすぐばれてしまうに決まっているではないか。その大嘘がばれたときいったいどんな事態が招来されるのか、そんなことも想定できないほどのばかであったのか。罪をすんなり認めるのとその場しのぎの否認に走るのと、どっちが得か自分に有利かという計算すらまともにできないほどのばかであったのか。そんな先生が初当選以来十五年も、それ以前の代議士秘書時代も含めればもっと長い期間になるけれど、百鬼夜行の政治の世界で生きてきたというのか。私はどうもおかしいと思う。そして中日の記事にある「はめられたと思わないこともない」という言葉に、私はいまや妙になまなましいリアリティを感じてしまう。 ──はめられたと思わないこともない。 などというのはそんじょそこらの堅気や素人がうっかり口にしてしまう言葉ではありません。この先生の日常がはめたりはめられたりすることも普通に行われる百鬼夜行の世界に直結していることを、この言葉は問わず語りに証明してみせるものであるでしょう。なんだかこわい。 そして案の定、津警察署に出頭した先生は否認を貫いたものの弁明や抗弁はいっさいむなしく、そのまま逮捕されてしまいました。中日新聞によれば出頭要請の段階で逮捕状が用意されていたそうで、逮捕理由は「関係者に圧力をかけるなど証拠隠滅の恐れがある」。 しかしこれだっておかしな話ではないか。逮捕状が出たということは容疑が固まったということであり、容疑が固まったということは関係者の証言もきっちり押さえてあるということである。いまさら先生にどんな証拠隠滅が図れるというのか。いやそれはいったい何の証拠か。先生が犯行を犯したという証拠っていうのはいったい何よ。投げつけた椅子とかメニュー立てとかなわけかしら。そんなものどうやって隠蔽するというのかしら。どうもおかしい。 といったところでとりあえず、『江戸川乱歩年譜集成』編纂者の腕の冴え、きのうにつづいて事態の推移を年譜ふうにまとめてみましょう。
県議会の対応が素早かったのもどうもおかしい。三重県議会はこんなに早く動けるのかと私は驚いてしまいました。7月17日付伝言にも記したことですが、私が以前、当時の県議会議長でいらっしゃったこの先生に質問のメールをお出ししたときはひどいものであった。 議会事務局経由でお答えを頂戴するまでにずいぶんと時間がかかったものであったが、当時にくらべると短いあいだにえらく立派になったものだなあ三重県議会も。などと感心する必要はありません。議員先生などというのは保身のためには弾よりも速く動いてうわっつらをとりつくろおうとするもので、しかもこの場合には会派間のかけひきもあったようです。 24日午前に開かれた会派代表者の会合では「捜査状況を見ながら的確に対応する」との合意が見られたらしいのですが、午後になって第二会派の自民・無所属・公明議員団が第一会派の新政みえに揺さぶりをかけました。新政みえは先生が所属していた会派なのですが、それに対してわれわれは先生への辞職勧告決議案をとりまとめるために臨時議会を招集するよう知事に要請しまっせ、と一発かましたのが自民・無所属・公明議員団の揺さぶりです。7月26日付伊勢新聞の記事によればこの日になって先生が容疑を認めはじめたそうですから、そうした情報が何らかのルートで県議会に伝えられ、この揺さぶりの引き金になったということも考えられるでしょう。 翌25日にはこの揺さぶりが功を奏し、県議会が知事に対して臨時会の招集を要請するにいたりました。しかし笑わせやがる。その臨時会は「政治倫理確立特別委員会の設置を目的」としたものだというではありませんか。何をゆうておるのか。政治倫理などはこのさい何の関係もありません。先生が飲食店で暴行におよんだことは政治倫理にはまったく無縁だ。そんなものはそれ以前の常識とか良識とかの問題なのであって、先生は単に人としてあほだったというだけの話なのである。何が政治倫理か。それとも何か。三重県議会では「いくら腹が立ったときでも人に椅子をぶつけないようにしましょー」などというのが政治倫理か。てめーら幼稚園児か。 そんなこんなで大騒ぎが演じられ、しかしとどのつまり先生はとうとう全面自供して、辞職の意向も表明したと報じられるにいたりました。やっぱり嘘をついていたのではないか。わざわざ会見を開いてしらじらしく大嘘をつき、それがばれて辞職に追いこまれてしまったのではないか。読者諸兄姉はそんなふうにお思いかもしれません。しかし私には、なにしろ『江戸川乱歩年譜集成』を鋭意編纂中の身の職業柄、表面的事実の裏を読み伝記的記述の行間を読む作業をつづけなければならぬ人間としてこの一件を眺めた場合、どうもこの先生、やっぱはめられたんじゃないのという気がしないでもありません。 実際に暴行におよんでいたのであれば、よほどのばかでないかぎり緊急会見で全面否定はしないのではないか。とはいえ見苦しい全面否定のあと先生はすっかり全面自供してしまったらしいのですから、ほんとにばかであったのだなということで話はまるく収まりそうなものなのですが、それでも勘ぐろうと思えば勘ぐれないわけでもありません。つまり警察からいわゆる別件をちらつかされ(それがどのような方向性をもった別件なのかはわかりませんが)、先生もしぶしぶというか泣き泣きというか、とにかく罪を認めるにいたったと考えられなくもないということです。少なくともそう考えてみたほうが、私にはずっと面白い。
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いつまでも先生のことだけを話題にしているわけにはまいりませんが、この一件から教訓を導いておくとするならば、おれもはめられないように気をつけなくちゃな、ということでしょうか。むろんあの先生がほんとにはめられたのかどうか、そんなこと私にはわかりません。しかしメディアで報道された事実を年譜ふうに構成してさらっと検討を加えてみますと、そのように考えてみるのがもっとも自然だろうなというひとつのストーリーが見えてくるような気がする。そのストーリーが真実かどうか、なんてことはじつはどうだってかまわない。 それが乱歩にとっての探偵趣味というものでしょう。幾重もの謎におおわれた唯一無二の揺るぎない真実を推理を重ねて発見する、なんてものは探偵趣味でも何でもない。揺るぎない真実のことなんかどうでもいいし、そもそもそんなものがこの世に存在するとも思えない。しかし世界がある瞬間にその様相を一変させ、隠されていた秘密がまざまざと開示されることはたしかにあって、そのとき世界はまったく新しい意味を帯びて眼前に立ち現れてくる。そうした瞬間に立ち会うことが乱歩のいう探偵趣味なのであって(このへんのことは1月15日付伝言のあたりに記してありますが)、たとえば「二銭銅貨」一篇を読むだけで乱歩は揺るぎない真実なんてものに端っから興味を示していなかったという事実が知れるでしょう。 いやいや、そんなことはこの際どうでもよろしいのですが、とにかくあともうひとつだけ、表面的事実の裏を読み伝記的記述の行間を読む作業のはてに結果としてとんでもないストーリーを捏造してしまうことだけは厳しく戒めなければならんだろうな、安物のフロイトじゃないんだから、ということも教訓のひとつにつけ加えて次の話題に進みたいと思います。 次はこれです。7月23日発行の名張市の広報紙「広報なばり」に記事が掲載された名張まちなか再生プランの話題です。 あ。名張まちなか再生委員会のみなさん。そんなに身がまえていただかなくても結構です。私はもうプランとも委員会とも何の関係もありません。好きにしていただいていいんです。私がみなさんに何かしら働きかけを行うことはもうありません。なんとか交流館でも乱歩かんとか館でも好きなようにおつくりください。ただまあ「広報なばり」がせっかくこうやって「名張のまちなか再生は進んでいるのか?」という記事を掲載してくれたんですから、ちょこっと拝見してみたいと思います。 名張市のオフィシャルサイトには「広報なばり」のテキストだけを掲載したページがあって、当該記事はこんなあんばいになっております。 引用いたしましょう。
あちゃー。 ──名張のまちなか再生は進んでいるのか? という問いに対する正直な答えは、少なくともこの歴史拠点整備プロジェクトにかんしては、 ──全然進んでおりません。 といったことであるようです。いや、全然というわけでもないでしょうから、 ──ごくわずかながらも悪い方向に進んでおります。 ということにしておきましょうか。とにかくびっくりするほどのんびりした話のようです。名張まちなか再生委員会のみなさんはいったい何をしておったのか。赤いべべ着てお昼寝でもしておったのか。それにしては長いお昼寝だったこと。 委員会が発足したのは昨年6月26日のことで、そのときまとめられた計画を昨年7月21日付伝言から再掲しておきますと──
「歴史資料館の整備事業」では昨年10月に「細川邸を活用するにあたっての基本計画」が策定され、今年3月までに細川邸の「整備にあたって実施設計を行う」ことと「整備後の、施設管理運営体制や、施設運営方針の検討を行う」こと、それから「細川邸の一部除却解体」とが行われるはずでした。 しかるに「広報なばり」によりますと、昨年度の実施事業は「旧細川邸の老朽、危険部分の除去解体」と「(仮称)初瀬ものがたり交流館基本計画の検討」のみ。発足当初の計画にあった「細川邸を活用するにあたっての基本計画」だけはなんとかまとまったらしいものの、それにひきつづく「整備にあたって実施設計を行う」だの「整備後の、施設管理運営体制や、施設運営方針の検討を行う」だのといったあたりがどうなったのか、この記事から知ることはできません。しかも今年度はいきなり「(仮称)初瀬ものがたり交流館改修工事」が実施されると来ております。 「桝田医院別館第2病棟跡地活用事業」にいたっては笑止千万。当初計画では昨年10月までに「桝田医院別館第2病棟跡地を活用するにあたっての基本計画を作成する」とされていたのですが、今回発表された今年度の事業は「(仮称)乱歩文学館基本計画策定」です。基本計画策定がそのまま今年度にずれ込んだのだと見るしかありません。委員会のみなさんのお昼寝はなんと長いことか。 ──寄付いただいた、江戸川乱歩生誕地碑のある桝田医院第2病棟跡と、「(仮称)初瀬ものがたり交流館」とを有効活用することにより歴史文化の薫る空間づくりを行います。 とある能書きにいたってはもう笑う気にもなれない。私は名張まちなか再生プランの素案が検討された昨年2月18日の名張市議会重要施策調査特別委員会を傍聴したのですが、そのときの報告を昨年2月22日付伝言から引いておきましょう。
この答弁から一歩も前に進んではおらんわけよ。去年の2月から一年半近くもたって、それでも名張まちなか再生委員会はこれとおんなじことしかいえないわけよ。 ──寄付いただいた、江戸川乱歩生誕地碑のある桝田医院第2病棟跡と、「(仮称)初瀬ものがたり交流館」とを有効活用することにより歴史文化の薫る空間づくりを行います。 というのは具体的にはいったいどういうことなのか。今年度、初瀬ものがたり交流館たらいうやつは改修工事が進められ、いっぽうの乱歩文学館たらいうやつは基本計画が策定されるとのことなのですが、後者の基本計画も決まっていない段階で前者の改修を進めてしまうようなことで、ほんとに両者を連動させた有効活用なんてことができるのでしょうか。できるわけねーじゃねーかこのインチキ委員会。いい加減にしろ。 いやいや、私は名張まちなか委員会に対してはもう何の働きかけもしないつもりなのですから、いい加減にしろ、などという叱咤鞭撻もやめておくべきでしょう。 ただし名張市民のみなさんには、ほら、名張市ではこんなインチキが堂々とまかり通っているのですよ、ということはお伝えしておきたいと思います。こんなこと民間じゃ絶対にありえねー、とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、お役所ではごく普通にあることのようです。
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